日本人が持つ「太りにくくなる菌」効果が出る食品 最新調査でわかった「日本人とやせ菌」の関係

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われわれの食事調査では、厚生労働省や各自治体をはじめ多くの調査でよく使われる「BDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票)」を使用しています。約1カ月間の食事を振り返りながら約80の質問に答えていくと、58種類の食品と100種類以上の栄養素の摂取量が算出されます。

もっともこれは調査のためなので、みなさんが自分の食事を見直す際は、ここまで多くの質問に答える必要はありません。厚生労働省の「食事バランスガイド」などを参考に、食事のバランスを振り返ってみてください。自身の食生活の、大きな傾向をつかめるはずです。

さらにくり返しチェックしていただければ、「どんな食事のときに、自分の体調はどうか」も見えてくるでしょう。

いろんなものを食べるといろんな菌が活性化する

より実践しやすい方法として、食品の品目ではなく、栄養素で考えることをお勧めします。五大栄養素の炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル(カルシウム、鉄など)を軸に、一食ごと、もしくは1日の食事のバランスを考えてみてください。くれぐれも、炭水化物は糖と食物繊維でできていて、白米で摂取できるのはおもに糖であることをお忘れなく。

大麦などの雑穀を加えたり、また、白米を冷まして食物繊維と同じ働きをする難消化性でんぷんを増やした状態にして食べるのが、腸内細菌のエサを増やす食べ方です。

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腸内細菌の中には、ヒトには消化できないものを好物にする菌もたくさんいます。腸内には多様な菌がいますが、私たちがエサを与えないと活性化しません。

さらに、菌は単独ではなく分業制です。菌によって役割が違うので、様々な種類の菌が活性化するように、食物繊維だけではなく、食事全体での栄養バランスも整えることが大切です。

「バランスのよい食事」は大事だということはよく知られていますが、それには、腸内細菌に対する効果もあるわけです。様々な栄養素をしっかりとること。そして、ヨーグルトなどでビフィズス菌や乳酸菌を継続してとること。これこそが、日本人の腸内環境から見て合理的な食事のとり方といえるのではないでしょうか。

國澤 純 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 ヘルス・メディカル微生物研究センター センター長

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くにさわ じゅん / Jun Kunisawa

1996年、大阪大学薬学部卒業。2001年、薬学博士(大阪大学)。米国カリフォルニア大学バークレー校への留学後、2004年、東京大学医科学研究所助手。同研究所助教、講師、准教授を経て、2013年より現所属プロジェクトリーダー。2019年より現所属センター長。その他、東京大学医科学研究所客員教授、大阪大学医学系研究科・薬学研究科・歯学研究科・理学研究科招へい教授(連携大学院)、神戸大学医学研究科客員教授(連携大学院)、広島大学医歯薬保健学研究科客員教授、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構客員教授などを兼任。 著書には『善玉酵素で腸内革命』(主婦と生活社)がある。

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