日本人が持つ「太りにくくなる菌」効果が出る食品 最新調査でわかった「日本人とやせ菌」の関係

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ただ、アッカーマンシア菌の保有率が高いヨーロッパ人はやせている人が多くて、保有率が低い日本人は太っている人が多い、というわけではありませんよね。つまり、このアッカーマンシア菌は多くの日本人の体質を特徴づける菌ではないということです。

もし腸内細菌叢を調べることがあって、アッカーマンシア菌が少なかったり、いなかったりしても、落胆する必要はまったくありません。実はわれわれの研究で、日本人にとってのやせ菌と見込まれる菌が見つかったのです。

日本人の「やせ」と「菌」の関係性

われわれ国⽴研究開発法⼈医薬基盤・健康・栄養研究所が明らかにしたのが、肥満や2型糖尿病を予防・改善する可能性がある新たな有⽤菌としての、「ブラウティア属」の「ブラウティア ウェクセレラエ(Blautia wexlerae)種」(以下、ブラウティア菌)です。

早稲田大学の竹山春子教授らと共同し、山口県周南市と連携して行った健常な人と糖尿病患者を比較した研究と、動物モデルを⽤いた検証、基礎研究によるメカニズム解析の結果をまとめて、2022年8月に『ネイチャーコミュニケーションズ』に発表しました。

近年、肥満や糖尿病の増加が社会問題になっていますが、⾷べすぎや運動不⾜などの⽣活習慣的な要因に加えて、腸内細菌の関与も⽰唆されてきました。

そこで、⽇本⼈の腸内細菌と肥満や糖尿病との関連について、ヒトを対象にしたデータ解析を⾏なったところ、ブラウティア菌が肥満や糖尿病リスクと「逆相関」する、すなわち、「肥満や糖尿病のリスクが低い人ほどブラウティア菌が多い」という知見を得ました。

その「抗肥満」「抗糖尿病」効果を検証するために、⾼脂肪⾷を与えて太らせたマウスにブラウティア菌を摂取させたところ、内臓脂肪の蓄積と体重の増加が抑えられました。また、高脂肪食を与えたマウスは糖尿病症状を示しましたが、ブラウティア菌の摂取によって糖尿病の症状も改善していました。

加えて、ブラウティア菌は、オルニチンやS-アデノシルメチオニン、アセチルコリンなど、代謝促進作用や炎症を抑制する効果のある物質をつくることも確認しました。

人間での有効性や安全性の検証はこれからですが、今回の結果から、ブラウティア菌が肥満や2型糖尿病を予防・改善する可能性があることが明らかになったのです。

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