社会構造の変化も見据え受信料10%還元を検討へ--松本正之・日本放送協会(NHK)会長
1月25日にJR東海副会長から日本放送協会(NHK)会長に転じた松本正之氏。昨年末からの会長候補選出をめぐり、NHK経営委員会の方針が二転三転して混乱する中、突如白羽の矢が立てられた。
アサヒビール出身の福地茂雄前会長に次ぎ、2期連続の外部出身者となる。任期は3年。多様なメディアの台頭でテレビの位置づけが変化する今、日本の公共放送を担う巨大組織をどう動かしていくのか。松本氏に方針を聞いた(インタビューは東日本大震災前の3月9日に実施)。
──畑違いのNHKに入り1カ月強。どういう印象を持ちましたか。
鉄道と放送では、たくさんのお客様を相手にする公共性という部分が共通している。これは最初に受けた印象と同じだ。ただ、仕事の質は違う感じがある。鉄道はダイヤがあって、それを安全に毎日運行するという点で、ある程度定型的な仕事だ。一方、放送は、ニュースなどで特にそうだが、中身が毎日違う。鉄道のように決まった仕事をするのではなく、むしろ日々変化する。その中で、公共放送の使命を保ちながらやっていくことに難しさがある。
──NHK職員の不祥事が絶えません。意識改革が必要なのではないでしょうか。
会長就任時、職員全員にNHKの原点にしっかり立ち、よいところを伸ばそうと話をした。組織にも人にも、それぞれよいところも弱点もある。弱点を補強するのは必要かもしれないが、それよりもよいところを伸ばすのが重要と思っている。よいところを伸ばせば、それにつれて弱点も改善されていくものだ。
──具体的にはどうしますか。
要するにNHKらしさを出していく。NHKの経営は受信料をベースに成り立っているため、信頼が一番の価値観になる。その信頼を視聴者はどういう形で見るのかといえば、それは番組だ。視聴者はそれぞれ見る番組が異なり、見る角度も違う。ただ、過去に蓄積してきた番組やスキル、時代劇でいえば時代考証、ニュースでいえば迅速かつ事実に即した番組作りといった、よいところを打ち出していくことはできる。今後も放送法でいろいろ義務づけられた、あるいは期待されている質の高い番組を作ることに尽きる。