「お母さんなんだから」呪いにかかった彼女の末路 産後うつは「いつもと違う」に気づくことが重要

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産後、なんだか元気が出ないな、おかしいなと思っても、「お母さんになれば、みんなやっていることなんだから」と自分に言い聞かせて、なかなか調子の悪さを認められない人は多いですね。

特に普段から元気で明るい人は、産後うつなんて自分には関係ないと思いがちです。責任感の強い人、これまで自分の力で困難を乗り越えてきた人にも、そういう傾向がありそうです。ひとりでなんとかしようと頑張ってしまう。

産後うつから抜け出すための第一歩は、「ちょっといつもと違う」と気づくことです。簡単そうだけれど、これが意外とむずかしい。一時的なことだからすぐに元気になる、と現実から目をそらしてしまいます。

不調を認めたくない気持ちは誰の心の中にもある

正常性バイアスという言葉を知っていますか? 自分に迫っている危険や脅威を「たいしたことはない」と思い込み、楽観視してしまう心の動きをこう呼びます。

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起きてほしくないことが起きている、それを認めたくない気持ちは誰もがもっています。

火災報知器が鳴ったら「大変だ!」とあわてて避難するよりも、「誰かがまちがえて押したんじゃない?」と様子を見る人のほうが多いですよね。誤作動にいちいち反応していたら日常に差し障りますから、ある意味では正しい判断なんです。

でも、「もしかしたら火事かも」と疑いながら様子を見るのと、「誤作動だ」と無視してしまうのとでは、その後の対応に違いが出ます。

繰り返しお話ししてきたように、産後うつには誰でもかかります。そしてそれは、自分の力で防ぐことがむずかしい。精神的にタフな人だって、かかるときはかかります。誰でも風邪をひいた経験があるはずです。風邪をひいた人を、弱いからだ、甘えているからだ、と責めたりしませんよね。

うつはいわば、心の風邪。心も風邪をひくのです。だから「自分だけは大丈夫」という思い込みを捨てて、不調をちゃんと認めましょう。弱った心をいたわるための、そこがスタートラインです。

立花 良之 医師

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たちばな よしゆき / Yoshiyuki Tachibana

国立成育医療研究センター こころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科 診療部長。信州大学医学部周産期のこころの医学講座 特任教授(併任)。産後うつをはじめとした妊産婦のこころの診療を行っている。周産期のこころの問題は妊産婦の誰もが持ちうるものであるということを社会全体が知り、すべての親子に寄りそうような世の中になることを願いつつ、地域母子保健活動に従事している。

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細川 モモ 予防医療コンサルタント、一般社団法人ラブテリ代表理事

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ほそかわ もも / Momo Hosokawa

両親のがん闘病を機に予防医療を志し、渡米後に最先端の栄養学に出合う。栄養アドバイザーの資格を取得したのち、2009年に医師・博士・管理栄養士など13種の専門家が所属する「ラブテリトーキョー&ニューヨーク」を発足。母子の健康向上を活動目的とし、食と母子の健康に関する共同研究を数多く手掛けている。近著に『成功する子は食べ物が9割』(主婦の友社)。

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