カメラに顕微鏡まで手放したオリンパスの新章 見えてきた「医療で世界と渡り合う」ための道筋

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グローバル展開に向けた変化は着実に進んでいる。新体制はドイツ人のカウフマン社長をはじめ、執行役10人のうち6人が外国籍。2022年度の6人(うち外国籍3人)体制から、医療分野を中心に大幅に人数を増やした。また4月からは、日本国内を含めた全社員にジョブ型雇用を適用。世界規模で適正な人材を登用できるようにする。

オリンパスは医療用の内視鏡で世界シェア7割を握る。カメラや顕微鏡で培ってきた光学技術を応用し、1952年に世界で初めて実用的な胃カメラの開発に成功した。

以降、内視鏡を使った医療の普及に取り組んできた。内視鏡は身体への負担を少なくした検査や手術ができる点などに強みがあり、普及活動の成果もあって世界的に市場は拡大傾向だ。

強みの内視鏡を軸に伸ばす

オリンパスには内視鏡のパイオニアとしての強みがある。医者が医療行為を学ぶ場である大学病院でのシェアが高いため、内視鏡を使う医者はまずオリンパスの機器で訓練を積むことになる。医者の間で師弟制度が浸透していることもオリンパス製品の使用が広がる要因となる。

オリンパスの内視鏡
オリンパスの内視鏡は世界で使われている(写真:オリンパス)

体内に挿入する内視鏡の操作は患者の苦痛に直結する。そこで医者は扱い慣れた機器を選ぶ傾向にある。

「(オリンパスと競合の)富士フイルムは定期的に説明の機会を求めてくるが、慣れた機器をそう簡単には置き換えられない」。ある内視鏡医はそう話す。

内視鏡と並ぶ事業となる治療機器は、一般的に手術を中心とした治療に使う機器を指す。中でもオリンパスが注力しているのは、内視鏡の先端に取りつけて腫瘍などの採取に使うはさみや、内視鏡を用いて体内に設置できるものなど、内視鏡と親和性のある領域だ。

治療機器は、医療の会社として成長するための重点領域と位置づけられている。患者の症例によって使用するものが異なる治療機器は、種類を拡充することによって対処できる症例が増える。内視鏡の関連領域として治療機器を拡大することで、成長を加速させる狙いだ。

竹内社長時代の2019~2022年度に、オリンパスは6社もの企業を買収しているが、うち5社が治療機器分野だった。2023年2月には韓国の消化器用治療機器メーカーを最大483億円で買収すると発表、6月には子会社化する予定だ。

市場において優位なポジションを維持している内視鏡に加え、関連する治療機器の拡充も進むオリンパス。ただ、オリンパスの目指すグローバルメドテックカンパニーは、単に事業内容を指すものではない。

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