オリンパス「カメラ事業」、売却されて初心に回帰 分社化を機に自覚した経営の弱みと製品の強み

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
OMデジタルのロゴ
防塵・防滴・堅牢製といった強みを持つOMデジタルソリューションズのカメラ。花や虫、鳥などの撮影向けに世界的にコアなファン層を抱える(撮影:尾形文繁)

東京都八王子市にあるOMデジタルソリューションズ(以下、OMデジタル)の本社。壁が草原の写真になっている受付には、スノーピーク製のキャンプ椅子が並ぶ。中堅カメラメーカーの遊び心に、心が和む。

スマートフォンの普及で、カメラ市場は縮小の一途をたどる。業界団体のカメラ映像機器工業会によると、デジタルカメラの出荷台数はピークだった2010年の15分の1にまで縮小した。

しかしカメラのほうが、表現の幅が広がったり、うまく撮影できたりするシーンがまだまだ多い。望遠での撮影や被写体の動きが速い場合などがそうだ。

アウトドア市場に絞った戦略

OMデジタルのカメラは、交換レンズとのセットでも軽くて抱えやすい。手ぶれ補正が強力で防塵防滴、耐衝撃性にも優れている。野外での撮影に適したこれらの特長は、アウトドア市場との親和性が高いとOMデジタルはにらんだ。

鳥や虫など動きの速い被写体を望遠で撮るシーンは、スマホカメラと競合しにくい。しかもコロナ禍以降、キャンプや登山などアウトドア市場は世界的に活況を呈している。体験価値を重視する傾向も強まる一方だ。

そこで採ったのが、アウトドア市場という領域に絞って自社ブランドの特徴付けをする戦略だった。4月にリニューアルした公式サイトは、ツアー会社と見まがうような大自然や動植物の写真が並ぶ。本社は受付のみならず、会議室にもキャンプ椅子を置くほどの徹底ぶりだ。

「カメラ業界はこれまでプロダクトアウト(作り手目線)で発展してきた。しかし今後は、スペックだけではなく、尖った製品・サービスによる顧客体験を重視したものになっていく」。OMデジタルの杉本繁実社長はそう話す。

次ページオリンパス時代の業績は
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事