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日本をよそに仁義なき保護主義に立ち返る欧米 新たな税制優遇競争の勃発で税収減の恐れ

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  • 土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授
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インフレ抑制法には、年間利益が10億ドル超の大企業への15%の最低課税の導入などの増税が含まれているのだが、そうして財源を10年間で7370億ドル(約96兆円)確保したうえで、エネルギー安全保障・気候変動関連投資への支援を10年間で総額3690億ドル(約48兆円)行うことが盛り込まれた。

このエネルギー安全保障・気候変動関連投資への支援が、大胆でありつつ、保護主義的でもあることで、波紋を広げた。

グリーン投資に長期で手厚い税制優遇

大まかにいえば、蓄電池や水素などクリーン電力やクリーン燃料といった今後の戦略産業において、アメリカ国内(自由貿易協定締約国を含む)で一定以上、自賄いするならば、大規模な税制優遇などの恩恵が受けられるようにする、というものである。

例えば、蓄電池生産投資支援として、対象設備投資額の最大30%を税額控除する。そして、アメリカで生産した電池を販売するごとに1GWh当たり3500万ドル(約46億円)の税額控除をする(ただし、両者は併用不可)。これは、生産比例の税額控除である。

これほど大規模で手厚い税制優遇は、先進国では稀である。しかも、10年ほどにも及ぶ長期にわたり政府がコミットする税制措置である。

企業の意思決定からみれば、(結果的に長期にわたるとしても)短期間しか実施される保証がない税制措置だと、企業の投資判断においてその税負担軽減効果を織り込みにくく、投資が促されない。しかし、長期にコミットしていると、企業の投資判断において算段ができる形で、好意的に受け止められるだろう。

もちろん、税制優遇の恩恵が受けられるのは黒字企業に限られる。とすると、初期投資段階での税制優遇である投資税額控除は、当初は赤字に直面するスタートアップ企業向けというより、格付けが高く資金調達力もあって、資金余力のある黒字企業向けだろう。そうした黒字企業にとって、最先端分野への投資に向けて、大規模な税制優遇は魅力的である。

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