2023年初にも公表されると見込まれていた、わが国の将来の人口見通しが、3月に入ってもまだ公表されていない。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が5年に1度作成する「将来推計人口」である。
前回の「将来推計人口」は、6年前の2017年4月に公表された。その時にも同じような出来事があったことを、東洋経済オンラインでの拙稿「将来推計人口の怪、甘い出生率予測は禁物だ」でも記したところである。本来公表されるべき時期になぜか公表されず、遅れて公表されたのだ。
5年に1度公表される「将来推計人口」は、1997年1月、2002年1月、2006年12月、2012年1月と、かなり定期的に公表されてきた。それが、前回の2017年4月は3カ月ほど遅れての公表となった。
「コロナで調査遅れ」だけではない事情
2017年の次は2022年だが、もう2023年になり、今回は既に1年遅れとなっている。その理由は明らかにされている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、厚生労働省が実施する予定だった「2020年国民生活基礎調査」が中止となり、同時に実施される予定だった「出生動向基本調査」の実施が1年延期されたためである。
それでも、2023年の早い時点をメドに取りまとめることとしていた。しかし、本稿執筆時点では依然として公表する日時すら明らかにされていない。その背景には何があるのか。
1つの衝撃的な出来事は、2022年の出生数である。79万9728人と80万人を割った。
前回2017年4月の「将来推計人口」では、出生数が80万人を割るのは2030年(出生中位の推計)だったから、出生数の減少が8年ほど早まったことになる。ただ、「将来推計人口」の出生低位の推計と比べると6.7万人ほど多いので、この実績の出生数は、中位推計と低位推計の間の値となっている。
2022年の出生数の実績値は何を物語るか。2つの含意がある。
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