1つは、コロナ禍での出生数の大幅な減少は、一時的なものか継続的なものかを見極めなければならないという点である。
出生数が、前回の「将来推計人口」の出生中位推計より乖離が顕著になったのは、コロナ前の2019年からである。だから、この出生数の大幅な減少は、コロナ禍だけが原因とは直ちに断定できない。
しかも、今後の出生数の見極めに重要な資料となる「出生動向基本調査」は2021年に実施されているのだが、2022年の出生数のさらなる減少は、その調査の後で起きている。したがって、今後の出生数の動向は、これも含めて丁寧に見極める必要がある。
初年の数字は推計を左右する
もう一つは、推計の発射台をどう置くかに関わる点である。
そもそも「将来推計人口」は、観測された人口学的データの過去から現在に至る傾向・趨勢を、将来に投影したものと位置付けられている。したがって、推計を行う初年の値をどう設定するか次第で、その後の出生数の値も異なってくる。
同じ傾向・趨勢を踏まえるとしても、推計の初年の出生数が多ければ、将来の出生数もより多くなるし、初年の出生数が少なければ、将来の出生数もより少なくなる。
こうした意味で、2022年の出生数のさらなる減少は、人口推計にインパクトを与えることとなるだろう。
加えて、「将来推計人口」の公表時期をめぐっては、もう1つ無視できない影響が作用していると考えられる。それは、公的年金の財政見通しとの関係である。
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