政府は2月14日、日本銀行の次期総裁に元日銀審議委員の植田和男氏を、副総裁に前金融庁長官の氷見野良三氏と日銀理事の内田真一氏を充てる人事案を国会に提示した。これまで約10年にわたり「異次元緩和」を主導してきた黒田東彦総裁が退任し、新体制下で日銀の金融政策はどう変わるのか注目が集まる。
金利上昇の影響を受けるのは財政より民間
金融政策の行方は、わが国の財政運営にも影響を及ぼす。現体制でとられている「長短金利操作」(イールドカーブコントロール=YCC)では、日銀が直接的にコントロールしようとしている国債金利は、今後どうなるか。
国債金利が上昇すれば、利払い費が増加する。利払いが滞れば、債権者の信用を失い、新規に借り入れることが困難となる。だから、利払い費は、ほかの政策的経費よりも優先して支出しなければならないものである。それだけ、財政運営は選択肢が狭まることになる。
国債金利が上昇すれば、民間の社債や借り入れの金利も連動して上昇する。現に、日銀が2022年12月の金融政策決定会合で、長期金利の変動許容幅を0.25%から0.5%に拡大した後、住宅ローンの長期固定金利が上昇するなど、民間金融に影響が波及した。
確かに、国債金利の上昇は、財政運営上、ほかの政策経費を圧迫する要因となるが、それよりも民間の資金繰りのほうが先に影響が及ぶ。そう考えれば、日銀の新体制がYCCをどうするかは、財政運営に忖度するよりも、国債市場の実勢を見極めつつ、民間金融への影響を注視して決めてゆくことになるだろう。
その意味で、日銀の金融政策も市況に合わせて対応していくことが望まれる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら