利払い費が増えると、確かに他の政策的経費を圧迫する。しかし、財政健全化にはむしろ好都合かもしれない。
予算(政府の予算制約式)では、歳入総額と歳出総額が等しくなるように編成される。歳入面では、税収等と国債発行で賄われ、歳出面では、政策的経費と国債費(利払い費と元本償還費)に分けられる。
すると以下が成り立つ。
財政健全化目標として掲げられる基礎的財政収支(プライマリー・バランス=PB)は「税収等―政策的経費」なので、上の式をそのように表し直すと、以下のように表せる。
そこで、国債金利が上がり、利払い費が増えたとする。利払い費は国債費の一部だから、国債費も増える。利払い費が増えた分、国債発行を増やせば、右辺の「国債費―国債発行」の値は変わらない。
しかし、利払い費が増えた分、国債発行を増やすということは何を意味するか。それは、増えた利払いに必要なお金を国債増発で賄ったこと、つまり借金の元利返済を借金で賄うことを意味する。それは、借金が雪だるま式に増えることに通じる。
また、金利が上昇している局面で、利払い費を国債増発で賄えば、火に油を注ぐが如く金利上昇を助長する。だから、利払い費の増加に対して、国債増発で臨むことはできない。
政策的経費を抑制して、増える利払い費を賄う
国債発行を増やさないようにして、国債費の増加に対処するにはどうすればよいか。それは、前掲の式において、右辺の「国債費―国債発行」の値が増えることにどう対処するかを意味する。
この式は、左辺と右辺は等しいという関係を表しているから、右辺の「国債費―国債発行」の値が増えたら、左辺の値も増える。つまり、「税収等―政策的経費」の値を増やすように対処する必要があることを意味する。
そうするには、税収が増えることもあり得るが、政策的経費を抑制することでも実現する。これこそ、まさに、増える利払い費を、政策的経費を抑制することで賄うという財政運営である。
税収が変わらないとして、政策的経費を抑制すれば、PBは改善する。こうして、国債金利の上昇に起因して増える利払い費に対し、政策的経費を抑制することで、プライマリーバランスの改善が実現する。国債金利の上昇は、財政運営に規律を与える点でも、決して悪いことではない。
だから、日銀は財政運営に遠慮してもらう必要はないのである。新体制の日銀が財政におもねることなく、日本経済が自律的な成長経路に向かう中で、市況に合わせて柔軟に金融政策を講じることが望まれる。
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