防衛費増額・GXで様変わりした財政の中長期試算 「2025年度黒字化達成」は歳出改革の中身次第

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1月24日に開催された経済財政諮問会議であいさつする岸田首相(写真・共同通信)

1月24日に開催された経済財政諮問会議で、内閣府から「中長期の経済財政に関する試算」(以下、中長期試算)の更新版が公表された。昨年末の2023年度予算編成で、防衛費の大幅増額やGX(グリーントランスフォーメーション)への先行投資のためのGX経済移行債(仮称)の新規発行などが決まり、これらがどの程度財政収支を悪化させるのかが、1つの焦点であった。

当連載「岐路に立つ日本の財政」でも、中長期試算については「どうなるのか?『東京五輪後』の日本の財政収支」など、過去に定期的に取り上げてきた。その中で、中長期試算の注目点の1つが、2025年度の基礎的財政収支(PB)黒字化目標が達成できるか否かである。

2025年度のPB黒字化目標は、2021年6月に閣議決定された「骨太方針2021」でも堅持されているが、翌2022年6月に閣議決定された「骨太方針2022」では明記されなかったことに表れているように、目標自体の位置づけについて、与党内で考え方に大きな違いがある。

政権を賭した財政収支改善努力をしなければ目標達成ができないものなら、その目標自体の位置づけをめぐり、ある種の路線対立に発展するだろう。しかし、少しの政策努力で目標が達成できるならば、わざわざ目標自体を凍結したり先送りしたりするほどのものではない。

「2025年度PB黒字化」と岸田首相は言うが…

今般の1月の中長期試算の結果はどうだったのか。1月24日の経済財政諮問会議で、岸田文雄首相はこう発言した。「今回の中長期試算では、成長実現ケースで示された成長率が実現し、これまでの歳出改革努力を継続した場合には、足下の税収増にも支えられ、引き続き、国と地方を合わせた基礎的財政収支は2025年度に黒字化する姿が示されました」。

この発言の解釈は、実は複雑である。素直に受け止めれば、それなりに経済成長率が高く、歳出改革努力を継続すれば、2025年度のPB黒字化目標は達成できる、という認識を岸田首相が示した、といえる。

しかし、実際はどうなのか。中長期試算で、防衛費やGX経済移行債はどのように盛り込まれたのかを見てみよう。

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