GX経済移行債は、多年度で収支を完結させる枠組みであることから、復興債と同じ扱いとしたことまではいいとしても、防衛財源は、実際にはまだ政治的決着がついていない。特に、中長期試算との関係では、厄介な問題が残されている。それは、歳出改革によって防衛財源を捻出することになっている点だ。
確かに、歳出改革によって財源が確保できれば、防衛費の増加を国債に依存せずに賄える。その歳出改革の効果は、中長期試算に織り込まれているとみられる。
防衛費増額を受け、歳出改革も若干追加されたようだ
例えば、2027年度で見てみよう。「防衛力整備計画」などに沿うと、2027年度には、防衛関係費を約8.9兆円に増やすこととしている。これは、「防衛力整備計画」策定前の防衛関係費(中期防衛力整備計画対象経費)が2022年度に5.2兆円だったのと比べると、3.7兆円増えることとなる。
そこで、国の一般会計における非社会保障費(地方交付税等や国債費は含まず防衛関係費を含む)について、中長期試算でどうなっているか検証しよう。「防衛力整備計画」策定前の2022年7月の中長期試算(以下、7月試算)と、今般の中長期試算(以下、1月試算)を比較すると、2027年度の非社会保障費は、7月試算では28.1兆円だったが、1月試算では31.3兆円と3.2兆円しか増えていない。
これは、2020年代の名目成長率を3.5%前後と想定する成長実現ケースの数字だが、2020年代の名目成長率を1%前後と想定するベースラインケースでも、7月試算の非社会保障費は26.8兆円だったが、1月試算では30.3兆円と3.5兆円しか増えていない。
7月試算でも、防衛関係費は、個別に試算していないものの非社会保障費の中に含まれ、一定の仮定を置いて成長率や物価の影響を受けて緩やかに増加する想定としているのだが、それでも両試算の差額は、「防衛力整備計画」に沿った増加額3.7兆円よりも少ない。ということは、それだけ非社会保障費で防衛関係費以外の支出を抑制していることが、1月試算に織り込まれていると推測される。
しかし、こうした歳出削減は、詳細が決まっていない。今後は、防衛財源として捻出できるような歳出削減を実現する決断が求められる。
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