加えて、前述の岸田首相の発言には、「これまでの歳出改革努力を継続した場合」とある。別の言い方をすれば、「これまでの歳出改革努力」を継続しなかったら、2025年度のPB黒字化は達成できない。それは、1月試算でも明らかにされている。これまでの歳出改革努力を継続しない場合は、成長実現ケースで2025年度の国と地方のPBは、1.5兆円の赤字である。
岸田首相が言及した「これまでの歳出改革努力」を継続すると、1年当たり1.3兆円程度のPB改善効果があることが検証されており、2024年度と2025年度の2年にわたり合計2.6兆円程度のPB改善効果が出ると考えられる。だから、これまでの歳出改革努力を継続した場合、2025年度のPBは1.1兆円の黒字になって、目標が達成できるというわけだ。
これまでどおりの歳出改革努力で足りるのか
確かに、これまで歳出改革努力を行ってきて、それが本当に国民が欲する支出だったかは別として、行政サービスが致命的に滞ったということはなかったわけだから、この歳出改革努力は政権を賭して実行しなければ実現できないというほど大げさなものではない。
ただし、「これまでの歳出改革努力」と、防衛財源捻出のための歳出改革の位置づけはどうなるのか。まさか重複計上はできまい。それぞれが別々の歳出削減を行わなければならない。岸田内閣では、子ども予算倍増も目指しているだけに、社会保障費と防衛費以外の支出において、どれだけ歳出改革を本気で実行できるのか。今後の取り組みが大いに問われている。
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