防衛費増額・GXで様変わりした財政の中長期試算 「2025年度黒字化達成」は歳出改革の中身次第

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加えて、前述の岸田首相の発言には、「これまでの歳出改革努力を継続した場合」とある。別の言い方をすれば、「これまでの歳出改革努力」を継続しなかったら、2025年度のPB黒字化は達成できない。それは、1月試算でも明らかにされている。これまでの歳出改革努力を継続しない場合は、成長実現ケースで2025年度の国と地方のPBは、1.5兆円の赤字である。

岸田首相が言及した「これまでの歳出改革努力」を継続すると、1年当たり1.3兆円程度のPB改善効果があることが検証されており、2024年度と2025年度の2年にわたり合計2.6兆円程度のPB改善効果が出ると考えられる。だから、これまでの歳出改革努力を継続した場合、2025年度のPBは1.1兆円の黒字になって、目標が達成できるというわけだ。

これまでどおりの歳出改革努力で足りるのか

確かに、これまで歳出改革努力を行ってきて、それが本当に国民が欲する支出だったかは別として、行政サービスが致命的に滞ったということはなかったわけだから、この歳出改革努力は政権を賭して実行しなければ実現できないというほど大げさなものではない。

ただし、「これまでの歳出改革努力」と、防衛財源捻出のための歳出改革の位置づけはどうなるのか。まさか重複計上はできまい。それぞれが別々の歳出削減を行わなければならない。岸田内閣では、子ども予算倍増も目指しているだけに、社会保障費と防衛費以外の支出において、どれだけ歳出改革を本気で実行できるのか。今後の取り組みが大いに問われている。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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