日銀の金融政策は、財政運営に影響を与えるから、財政当局におもねるという見方はあるが、財政運営から見て、日銀に遠慮してもらう必要は基本的にないし、あってはならない。
なぜ遠慮してもらう必要がないのか。
コロナ禍以降、歳出膨張が著しい。コロナ対応でやむをえない時期はあったが、コロナ対応が一山超えたかと思いきや、今度は防衛費やGX(グリーントランスフォーメーション)投資、そして子ども予算と巨額の財源を必要とする財政運営となっている。
必要な予算は財源をしっかり確保して支出すべきだが、そこに無駄遣いが紛れ込んでいては、いくら財源があっても足りない。
国債金利の上昇が現実を突きつける
加えて、「国債金利がほとんどゼロだから、今のうちに国債を増発して、こうした歳出をどしどし増やすべき」という意見は根強くある。しかし、欧米でインフレが起き、インフレ阻止のために金利が上昇し、わが国でも欧米よりは緩やかではあるが物価は上昇基調となっている今、もはや「国債金利がほとんどゼロ」ではなくなっている。
「国債金利がほとんどゼロは幻想だ」と言っても、「金利が上がるというのはオオカミ少年」と言って話を聞かない。ならば、国債金利は上がるという現実を突きつけるしかないーー。目下のわが国における財政運営をめぐっては、そんな雰囲気すらある。
国債金利が市況に合わせて上昇して、利払い費が増えても、直ちに財政破綻するわけではない。しかも、たかだか1~2%の金利上昇では、市場でさえそれを財政破綻の兆しとは捉えないだろう。
とはいえ、数年後には利払い費は数兆円というオーダーで増える。
財務省「令和5年度(2023年度)予算の後年度歳出・歳入への影響試算」によると、国債金利が想定よりも1%上昇すると、1年後には0.7兆円、2年度には2.0兆円、3年後には3.6兆円も利払い費が増加するという。
3.6兆円といえば、昨年末に決定した防衛費の増額で、2027年度における防衛費を2022年度比で増やすこととしている3.7兆円に匹敵する規模である。金利が想定より1%上がるだけで、一生懸命かき集めた防衛財源が利払い費の増加で吹き飛ぶほどのインパクトである。
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