そもそも「将来推計人口」を作成する主たる目的は、公的年金の財政見通し(年金の財政検証)を計算する際に用いることである。公的年金の給付を将来どれだけ出せるかは、その原資となる年金保険料を払う将来の就業者人口にも大きく依存する。だから、公的年金の財政見通しを示すうえでも、この「将来推計人口」は重要なデータとなる。
しかし、足元の出生数の減少は、将来の年金財政に暗い影を落とす。
今のわが国の公的年金制度は、実質的には賦課方式である。つまり、今ある公的年金積立金を取り崩して将来の給付の足しにはするものの、実質的には高齢世代への年金給付は、その時の若年世代の年金保険料で賄われる仕組みである。
少子化の加速で将来の年金給付が減る
そうなると、将来の年金給付は、将来の若年世代の人口にも大いに依存する。足元で出生数が減ると、20~60年後の就業者人口がその分減ることとなり、それだけ年金保険料収入が減ることになる。すると、それだけ年金給付はより少なくしか出せなくなる。
もちろん、厳密な計算は、今回の「将来推計人口」が出されてからでないとできないのだが、論理的に考えれば、前述のようなことは想像できる。
端的にいえば、今回の「将来推計人口」で、前回よりもさらに少子化が進んで将来の就業者人口の減少が顕著になれば、将来の年金給付が以前と比べて少なくなるかもしれないという連想が働く。しかも、今回の「将来推計人口」が公表されることでそれが鮮明となる。
そう考えれば、今直ちに新しい「将来推計人口」を出してよいか、というタイミングの見計らいが起きる。
そういえば、4月には統一地方選挙がある。もちろん、公的年金は国政の案件であって、地方行財政の案件ではない。しかし、国政の政権与党にとって不利になるような情報は、地方選挙にも不利に働くことはあっても有利に作用することはない。
事務方では既に公表の準備ができているが、今出すのは得策ではない……ということになっていないことを願う。
「将来推計人口」は、社人研が作成するのだが、お披露目となる舞台は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会人口部会である。この部会の会合の開催は事前に案内が出るのだが、本稿執筆時点ではその開催案内は出されていない。今回の「将来推計人口」の公表はいつになるのだろうか。
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