ウォーキングをして外の景色の変化を感じる、足の筋肉を刺激し活性化させる――。12の原因を因数分解してみると、いかに「体」と「脳」を刺激するかが認知症予防に重要であると、再確認できます。
少し論理が飛躍するかもしれませんが、何歳になってもチャレンジ精神を持って、前向きに生きていくことが一番の認知症予防かもしれません。
脳ドックは認知症予防に有効か
ちなみに、みなさんは「脳ドック」を受けられたことがあるでしょうか?
脳ドックは、豪華な人間ドックの検査項目に必ずといっていいほど含まれている項目です。
認知症対策のために脳の状態をチェックしておきたい、という理由で脳ドックを受けている方も少なからずいらっしゃいます。
しかし、認知症予防として正直なところを申し上げると、脳ドックはそれほど期待できないだろう、というのが私の本音です。そもそもの話になりますが、実はこれほど脳ドックを一般的に行っている国は、世界中見渡しても日本だけなのです。
脳ドックでは、脳のMRI(磁気共鳴画像)の撮影や、頸部血管エコーと呼ばれる首の超音波検査をセットで行います。これらの検査では血管が狭くなっていないか、あるいは脳腫瘍や脳動脈瘤(りゅう)がないかを調べます。
一見すると、認知症をはじめ、脳の病気の早期発見に有益に思える脳ドックですが、なぜ世界ではスルーされてしまっているのでしょうか?
脳ドックのルーツは、1980年代の北海道・札幌にさかのぼります。札幌では1980年代に現代の脳ドックの先駆けとなる「脳動脈瘤検診」を行う取り組みをはじめており、この取り組みは当時、非常に好評でした。
それもそのはずです。恐ろしいくも膜下出血を引き起こす脳動脈瘤を事前に見つけられるセンセーショナルな検査が日本ではじまったとなれば、一度は受けてみたくなるでしょう。
以降、この脳動脈瘤検診は全国各地へ広がっていきます。1992年には「日本脳ドック学会」が誕生します。こうして脳ドックは人間ドックのスタンダードな検診としての地位を完全に確立しました。
しかし、それだけ素晴らしいものであれば、日本発信で世界中に広がっているはずですが……。残念ながら世界では取り入れられる気配がまったくありません。それどころか、アメリカにいたっては無症状の人に首の血管の超音波検査を行うのはグレードD、つまり「デメリットのほうが大きいから受けないほうがよい検査」という扱いになっています。
なぜ、検査を行わないほうがよいという判断にいたったかというと、間違って血管に異常があると判断され、必要のない手術を受ける方が一定の割合で生まれるためです。
このように脳ドックの検査だけではなく、一見メリットのありそうな検査でも、実は科学的に解釈すると受けると逆に健康を害する場合もある、ということは覚えておきましょう。
もちろん、認知症予防に関しての有効性が証明されているわけではないといった事実や、検査のメリット・デメリットをしっかり踏まえたうえで、脳ドックを受ける選択肢を持っておくことは悪いことではありません。現状は勇んで推奨するほどの検査ではない、というのが正直なところです。
むしろ認知症予防のためには、先述した12の種類の原因を1つでも多くなくすために、日々の生活習慣の改善に取り組んでいくことのほうがとても重要です。
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