「仕事が忙しい事に達成感を覚える人」が残念な訳 評価しやすいが、重要なのは「忙しさ」じゃない

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昔から人間が大切にしてきた意味での生産性。それはつまり、現代を生きる僕たちが経済に注意を払うのと同じように、もしくはそれ以上に、文化と生の喜びに焦点をあてることだ。つまり人生に意味を与えてくれる生産性であり、ただ「生産的である」ことの証明のために忙しくすることではない。

けれど僕たちが今いる暗黒の谷はとても深く、道は険しそうだ。起源や原因がわからなくなるほど時が経っても、数世紀にわたり僕たちを支配してきたものを、そう簡単に振り払うことはできない。

だが、谷底を掘り進んで、その深淵を目撃した人がいる(同時に脱出方法も見つけたらしい)。その人の名は、アリアナ・ハフィントンだ。

血まみれで目覚めた、ある朝のこと

「ハフポスト」創業者であるアリアナ・ハフィントンを救うには、休暇以上のものが必要だった。ハフポストは、ニュース・ブログサイトだ。インターネット上でいちばん広く読まれ、リンク引用される頻度が高いメディアである。

アリアナ・ハフィントンはタイム誌とフォーブス誌の「もっとも影響力のある100人」にそれぞれ選出された。2007年、「ハフポスト」を運営し始めて2年間が過ぎたとき、彼女は1日18時間働いていた。

しかしある日、現実を直視することになる。オフィスの机の下で、血まみれで、頬骨を骨折した状態で目覚めたのだ。脳腫瘍があるのではないかと疑った彼女は、いくつもの病院に行き、原因を突き止めようとした。

しかし結局、「問題があったのは私の生き方でした。そして、同じ問題で多くの人が苦しんでいることに気づきました」と言う。脳腫瘍よりもシンプルなことが原因となり、彼女は気を失った。働きすぎによる疲れだ。

この問題に苦しんでいる人がほかにもいることに気がついたアリアナは、起業家のやり方で問題を解決しようとする。「スライブ・グローバル(Thrive Global)」(訳注:Thriveには繫栄する、栄えるという意味がある)という名で、消費者の幸せと生産性のためのプラットフォームと会社を作ったのだ。

燃え尽きるまで働かないと成功できないなんて、みんなで信じ込むのはもうやめよう。そんなやり方を変えていこうという、使命を掲げたのだ。

アリアナ・ハフィントン

タイムオフを仕事に取り入れるとき、多くの雇用主は企業の有休方針に入れ込むだけで済ませて、それ以上は踏み込もうとしない。アリアナ・ハフィントンの場合は、休暇だけでは十分ではないと考え、タイムオフの概念を「スライブ・タイム」と呼んだ。

「意図的に回復する時間と捉え、過去を振り返り将来を見据えるよう促したのです。締め切りに間に合わせようと必死になることで、なにを失っていたのかを考え、改善策を具体的に練る仕組みですね。1つのプロジェクトの終わりは、新しいプロジェクトの始まりです。だから休憩する時間というより、大切な日々の業務として考えています」

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