ここで重要なのは、「スライブ・タイム」は有休や病欠などの日数には数えないことである。
「従業員に、回復と労働は別物と考えてほしくないのです。仕事だと思ってきちんと休んでほしい。“スライブ・タイム”はご褒美ではありません。責任です。上司命令です。上司の大切な仕事は、燃え尽き症候群が起こるのを防ぎ、チームのパフォーマンスを維持することなのですから」
悪い癖はそう簡単には治らないのに、いっぺんに全部を変えようとして挫折する人も多い。そこでアリアナは、「いきなり大きな目標を立てるのはやめましょう。まったく新しいライフスタイルを目指すわけですから。それとも、意志の力だけに頼るつもりですか? その態度こそが、意志の力に対する科学を無視しているんですよ」と話す。
充電のためには、やるべきことが終わっていないときでも「もう今日は仕事しません!」と宣言することも有効的だ。
世界に蔓延「燃え尽き症候群」
WHO(世界保健機関)が発表した2019年版の国際疾病分類に、「燃え尽き症候群は、職場環境の慢性的ストレスがきちんと対処されないときに起こる」とある。WHOによると、燃え尽き症候群には大きく3つの症状があるらしい。「意欲低下・疲労」「仕事への心理的隔絶感・後ろ向きな感情・悲観的感情の増大」「業務効率の低下」だ。
「ナレッジワーカーにとっての8時間労働というのは、産業労働者にとっての16時間労働と同等だ」「8時間労働は肉体労働のための基準であって、精神のための基準ではない」と、起業家で作家のステファン・アーストルは述べている。
1世紀ほど前、人々には肉体の限界を超えるほどの労働が強いられていた。それと同じことが精神に起こっているのが現代だ。
とくにミレニアル世代での被害が深刻らしい。この世代は仕事と自己価値を結びつけやすく、短期的な結果を求め続ける。しかも、ソーシャルメディアのプロフィールを磨くために、つねに他人の成功と自分の成功を比べる。趣味もレジャーでさえも、ビジネスチャンスや副業にできないかと考え、そうでなければ無駄だと思ってしまうのだ。
BuzzFeedに掲載された「ミレニアル世代はどのようにして『燃え尽き世代』になったのか」の中で、ジャーナリストのアン・ヘレン・ピーターソンは自らの燃え尽き症候群の経験を回想している。
簡単な作業が難しくなり、予定を立てたりメールの返信をしたり、郵便局に行くことさえ満足に行えなかったそうだ。彼女はこの症状を「雑用麻痺(まひ)」と呼び、「高機能仕事中毒なのだ」と考察する。大きなタスクはやり遂げられても、地味で単純な仕事が面倒くさくなり、不安を感じるようになるということだ。
ピーターソンは記事で、精神分析学者で燃え尽き症候群を専門に研究するジョシュ・コーエン博士の言葉を紹介している。「内なるすべてのエネルギーを使い果たしてしまうと、燃え尽き症候群になります。なにがあっても進むのだと自分にムチをうつ衝動から自由になれないのです」
この神経をすり減らすような衝動こそが、内面化されたプロテスタント労働倫理であり、それを解毒できるのはタイムオフしかない。
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