朝ドラ「舞いあがれ!」が最終週で未来を描く理由 「空」「飛ぶ」より重視した 「レジリエンス」の物語

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では、「舞いあがれ!」の制作サイドは、「舞が空を飛ぶこと」以上に、何を描きたかったのでしょうか。

あらためて番組ホームページの「ものがたり」を見ると、最上部に「向かい風を受けてこそ飛行機は空高く飛べる!さまざまな困難に翻弄される今、空を見上げて飛ぶことをあきらめないヒロインの物語を通して、明るい未来への希望を届けます!」と書かれています。

「空」や「飛ぶこと」は要となるモチーフではあるものの、制作サイドが最も描きたかったのは、ここに書かれた「向かい風」や「困難」を乗り越える主人公の生き様。舞の生き様を見せることで、コロナ禍などの「向かい風」や「困難」に直面している人々に希望を見せようとしたのでしょう。

「舞いあがれ!」はビジネス用語で言えば、レジリエンスの物語。「向かい風」や「困難」が訪れても、心が折れてしまうのではなく、状況に対応して生き延びていく回復力や柔軟性を描こうとした作品なのです。

朝ドラ屈指のタフな主人公だった

では、その“主人公・舞の生き様”はどんなものだったのか。

物腰の柔らかさと幼少期の病弱なイメージから、「地味で繊細な主人公」というイメージの人が多いかもしれませんが、終盤の今、感じさせられるのは、「朝ドラ屈指のタフな主人公」であること。

振り返ると、「なにわバードマン編」では絶対にできないと言われたパイロット役を務め、急きょ大学を退学して挑んだ航空学校の試験に合格。航空学校の厳しい訓練や審査もパスしたうえに恋も実らせ、就職活動も成功させました。

父が急死し、パイロットの夢をあきらめ、恋人とも別れるという苦しい状況の中、やったことのないリストラや営業の仕事をこなし、倒産寸前だった「IWAKURA」は見事に復活。さらに地元・東大阪の町工場を救うために起業し、すぐに軌道に乗せるなど、生まれ育った地に大きく貢献しています。

プライベートでも、これほど働きながら最高のパートナーと結婚し、長女も出産しました。実の母や祖母だけでなく、義父母との関係も円満そのもの。「地味で繊細」どころか、思い描いたものをすべて実現させていく「派手で豪快」な主人公だったのです。

最終週は、そのタフな主人公がコロナ禍をどのような言動で乗り越え、最後に空へ舞いあがっていくのか。また、制作サイドがどれくらいの多幸感を詰め込んだクライマックスを用意しているのか。いずれにしても賛否の声が飛び交い、ネット上をにぎわせてくれそうです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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