朝ドラ「舞いあがれ!」が最終週で未来を描く理由 「空」「飛ぶ」より重視した 「レジリエンス」の物語

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まず「おかえりモネ」は2022年まで描くことで、コロナ禍が終わった穏やかな日常を見せました。次に「カムカムエヴリバディ」は2025年まで描くことで、百年の物語を成立させるとともに、成長したヒロインの姿を見せ、英語講座が未来に続いていくことを感じさせました。さらに「ちむどんどん」は202X年(令和X年)まで描くことで、ヒロインが大家族を築き、沖縄に平和が続いていることを表現していました。

いずれも幸せな未来を描くことで、今を生きる視聴者に希望を見せようとしている様子がうかがえます。半年間、平日の毎朝放送されるため、視聴者の思い入れの増す朝ドラは、ハッピーエンドが大前提。特に近年は「普通のハッピーエンドでは満足できない」という視聴者が増えたからか、主人公の幸せな姿だけでなく、登場人物を次々に再登場させ、一人ひとりの幸せも描く大団円という形が定着しつつあります。

前述した3作は、「最後に年月をスキップしたほうが大団円を見せやすい」というところが感じられました。制作サイドにしてみれば、未来は「現実に縛られず自由に描くことができる」「先がわからないため最終週まで盛り上がりを引っ張れる」などのメリットがあるため、今後も現代が舞台の物語ではこの手法が採用されるでしょう。

空を飛ぶ主人公というミスリード

「舞いあがれ!」に話を戻すと、最後に舞は幼いころから憧れていた空を飛ぶことは確実であり、しかも大切な場所である五島の空を飛ぶことになりそうです。

ただ、当作は「主人公の舞が空を飛ぶこと」がテーマの物語ではありませんでした。最後まで、「大型旅客機のパイロットになってほしかった」「『航空学校編』は何のためにあったのか」「そもそも町工場や起業のくだりは必要だったのか」などの声がやまなかったのは、この点で多少のミスリードがあったからでしょう。

最終週を前にあらためてここまでの物語を振り返ると、その構成は意外なほど規則性があり、計画性の高いものであることに気づかされます。

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