朝ドラ「舞いあがれ!」が最終週で未来を描く理由 「空」「飛ぶ」より重視した 「レジリエンス」の物語

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まず序盤の3週は、幼少期の舞(浅田芭路)と、母・めぐみ(永作博美)、祖母・祥子(高畑淳子)のすれ違いと再生を描いて視聴者からの称賛を獲得。第4週に主演・福原遥が本格登場すると、人力飛行機サークル「なにわバードマン編」と、パイロットを目指す「航空学校編」が4週ずつ描かれました。

その後、舞はリーマンショックの影響で航空会社への就職が延期されてしまい、父・浩太(高橋克典)が経営する「IWAKURA」を手伝いはじめますが、心労がたたった父が急死。舞は航空会社への就職をあきらめて「IWAKURA」の建て直しに専念し、恋人の柏木(目黒蓮)とも破局してしまいました。

会社の建て直しを2週で描いたあと、航空機部品の試作に挑む様子を2週、兄・悠人(横山裕)の事件と貴司との結婚を2週、新会社「こんねくと」設立までを2週、「こんねくと」の事業と祥子の東大阪移住を2週、そして最後の2週は空飛ぶクルマの開発を描いています。

後半は2週きざみで急展開の連続

前半の「なにわバードマン編」と「航空学校編」は、空の美しさと舞が飛ぶ姿を見せられる、という点で最高の舞台であり、ビジュアル面やエンタメ性の高さもあり、各4週かけてじっくり描かれました。

しかし、父・浩太の死後を描いた後半は、「2週ごとに物語を大きく動かしていく」という構成に一変。空の美しさを感じさせるシーンは減り、もちろん舞が飛ぶ姿はありません。ビジュアル面やエンタメ性で前半に劣る展開が続くからこそ、2週の短いペースで次々に物語を動かしていったのではないでしょうか。

そんな2週きざみの展開を見て、「『航空学校編』は何のためにあったのか」「大型旅客機のパイロットになってほしかった」「そもそも町工場や起業のくだりは必要だったのか」と感じた視聴者の気持ちも理解できるのです。

また現在、「空飛ぶクルマの開発はラスト2週だけでなく、もっと時間をかけてほしかった」という声があがっているように、「舞が空や飛ぶことにもっとかかわってほしい」という視聴者が少なくないのでしょう。このように前半と後半の落差に最後まで戸惑っている視聴者がいる分、舞が空飛ぶクルマを操縦するであろう最終回の盛り上がりは限定的なものになるかもしれません。

次ページ「舞が空を飛ぶこと」以上に描きたかったこと
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