前出の大和社員はこう付け加える。「せっかく盛り上がってきたIPO市場が冷や水を浴びせられてしまった」。
IPO件数は2009年を底に復調傾向をたどってきた。だが、大手ベンチャーキャピタル(VC)幹部は「gumiの一件以降、証券取引所の審査が厳しくなっている。引受証券会社の審査に通っても、その後に取引所からハネられるケースも出ている」と語る。
あるベンチャー経営者は「VCに資金調達を断られるようになった。雰囲気が変わってきた」と漏らす。
引受証券会社を監督する金融庁も、「われわれの認識も日本取引所グループと基本的に同じだ。引受証券会社には、(有価証券の)発行会社に対し、財務状況や経営成績を中心に、より適切な審査を行っていくことが求められる」としている。
不祥事で創業者が辞任する企業も
お粗末なIPOの類似例はほかにもある。アサイードリンクなどを販売するフルッタフルッタ(2014年12月上場)は、上場後2カ月で業績を下方修正。直後にCFO(最高財務責任者)が「一身上の都合」で辞任している。
大手でも、ソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶ディスプレー事業を統合したジャパンディスプレイが、2014年3月の上場以降、2度の下方修正を行った。
架空取引で引責辞任に追い込まれたケースもある。2013年10月に上場した、省エネ管理や電源開発などを展開するエナリスは翌2014年、会計処理に疑義が発生。同年12月に創業者の池田元英氏が社長を辞任した。
婚礼情報サイトを運営するみんなのウェディング(2014年3月上場)は、同年11月に創業者で社長兼CEO(当時)の飯尾慶介氏が売り上げにかかわる入金を個人資金から拠出していたことが判明。辞任に追い込まれた。
いずれも、直近の株価は上場時の公開価格や初値を大きく下回っている。すなわち、上場すること自体を目的とする「上場ゴール」との批判を免れない結果となっている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら