東証の林謙太郎・上場部統括課長は「エナリスの事案があってから、取引所として対処が必要との意識が生じた。3月31日に出した声明は、gumiだけを問題視しているわけではない」と、市場全体に広がる“緩み”に危機感を持つ。
こうした市場への背任行為ともいえる事例に、投資家もいらだちを隠せないでいる。
「これは予想の粉飾だ」。レオス・キャピタルワークスの藤野英人取締役は、上場直後の業績下方修正や架空取引をこう断ずる。「発行会社は業績予想を達成できると思い込んでいても、その前提が強気でありすぎれば、粉飾と同じ。VCから集めたカネで過度に広告宣伝に依存しているのもよくない」と、ベンチャー経営者が実力を実態以上に高く見せようとしている風潮に警鐘を鳴らす。
前出とは別のVC幹部は「今は必要以上にベンチャーにカネが集まる。が、テレビCMに使っているだけで、資金の供給量にふさわしい起業家はまだ少ない」と語る。
IPOへの関心は高止まりか
では、今後のIPO市場はどうなるのか。投資情報サイト「東京IPO」の西堀敬・編集長は「今年のIPO件数は前年を確実に超えて、80~90件まで増える」と見通す。今秋には超大型銘柄である日本郵政の上場も控えており、IPOに対する関心は当面高止まりしそうだ。
とはいえ、「4月末に上場を予定するスマホニュースアプリのGunosyのように、企業体として小柄で、業績見通しが不安な会社もある」(同)とも指摘。先行きを楽観視してはいない。
安倍晋三政権が進める成長戦略でも、ベンチャー支援は政策の柱だ。第2のgumiが生まれぬよう、発行会社だけでなく、関係者それぞれの自覚が求められている。
(「週刊東洋経済」2015年4月18日号<13日発売>「核心リポート04」を転載)
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