アメリカ株が再び大きく下落する可能性はあるか それでもFRBは0.25%の利上げを継続するのか

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今回は久しぶりに起きた大規模な金融機関の破綻であり、一見2008年のリーマンショック再来を想起させる出来事のようにも見える。リーマンショック時には、「サブプライムローン」という言葉に代表されるように、信用度の低い住宅ローンのリスクが「証券化技術」を通じて大きく膨らんだ。それに多くの米欧の大手金融機関が深く関わり、問題を深刻化させた。

ただ、今回のSVBの破綻は、新興企業からの大規模な預金が集まったいっぽう、それを証券(債券、MBS)に大規模に投資したものの、金利上昇によって損失が膨らんだことで自己資本が大きく棄損された、と報じられている。

金融システム全体を揺るがすほどの信用膨張は発生せず

つまり、ひとことで言えば「金利上昇による損失リスクへの対応が不十分だった一部中堅銀行の破綻」として理解される。同様に、金利上昇による損失を被っている中堅中小銀行は他にも存在する。だが、リーマンショック時のように、金融システム全体を揺るがすほどの信用膨張が発生している可能性は高くないように思われる。

また、当局が預金保護と流動性供給を行うことで、スムーズに「最後の貸し手」としての役割を果たしつつあるようにみえる。必要な金融システム安定化策が、議会によってスムーズな対応が実現せずに、問題解決が長引いたリーマンショック時と現在とでは、状況が異なっている。

それでも、もし筆者の見立て通り、リーマンショックの再来には至らないとしても、金融システムがいったんでも揺らいだ影響は小さくないはずだ。すでに銀行における企業や家計への貸し出しの態度は一定程度厳格化している。今後は破綻をうけて、当局による銀行に対するリスク管理がさらに徹底されることが予想され、企業や家計の支出行動を抑制的に作用することになりそうだ。

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