「植田次期日銀総裁」で円安より円高が進む可能性 「金融緩和継続の副作用」をどう判断するのか

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次期日銀総裁が確定的になった植田和男東大名誉教授。今後、金利や為替はどう動くのか(2006年撮影:尾形文繁)

2月14日、政府は次期日銀総裁に東大名誉教授の植田和男氏を充てる人事を国会に提示、同氏の就任が確定的になった。

金融政策転換の可能性は当面高くない

植田氏は事前の候補としてメディアなどで挙げられておらず、筆者を含めた市場関係者にとって想定外だった。黒田東彦現総裁の体制下の終盤で2%インフレの完全実現が視野に入りつつある中、新たに発足する執行部が「長期金利ターゲット」など現行の金融政策をいつまで続けるかが注目される。

植田氏は10日にメディアへの応答で「現在の日銀の政策は適切であり、当面は金融緩和の継続が必要」との考えを示した。また2022年7月の論考では、日本でインフレ率が上昇している中で、「拙速な引き締めを避けよ」との標準的な見解を示している。これらの発言が意識されて、「当面、金融政策を大きく転換させる可能性は高くない」と認識されるだろう。

また、植田氏は金融緩和の効果を認識しつつも、一方で副作用についても相応に重視している可能性がある。例えば、2018年の論考では、金融機関などの収益が減ることによる金融仲介機能の低下を指摘している。ただ、それから数年経過しているが、副作用について踏み込んだ言及は限られており、最近の同氏の考えは明確ではない。

なお、金融仲介機能の低下については、日銀短観によれば、2018年以降、銀行の貸出態度について、「緩和的な状況」はコロナ禍を経てもほとんど変わっていない。このため、金融仲介機能の低下という副作用は、現行の緩和政策修正を前倒しにする要因にはならない、と筆者は考えている。

また、2022年後半からインフレ率が高まっており、同年12月の消費者物価指数(エネルギー・食料除いたベース)は前年比+1.6%まで高まっている。「2%インフレ目標との距離をどう考えているか」、についての植田氏の最近の認識は明らかではない。これらの点について、今後の同氏の発言が、市場の材料になる可能性がある。

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