今回の銀行破綻をもたらしたのは、一部銀行のリスク管理の問題が起因になった側面が大きい。だがこれまでのFRB(連邦準備制度理事会)による利上げの引き締め効果が、銀行の貸し出し行動を通じて、経済に波及しつつあることを示す事象と位置付けられる。
これまで利上げを続けても高インフレが収まらず、FRBはその抑制に苦慮している。当局が銀行破綻という混乱を意図的に引き起こしたとは考えていないが、FRBの引き締めの効果が貸し出し抑制によって強まる動きともいえるのだから、今回の混乱はインフレ抑制の観点からは、悪い面だけではないともいえる。
22日のFOMCでの0.25%利上げの可能性は五分五分
直近までの強い経済指標などをうけて、アメリカ経済については、このまま成長率とインフレの加速が起きる、いわゆるノーランディングシナリオが実現するとの思惑が浮上していた。
同国経済は、特に労働市場において底堅さを保っている。だがハイテクを中心とした業種での大型リストラの発表、さらにはこの業種を支えていた金融機関の一部が揺らいでいることを踏まえれば、今後は一部経済指標が示唆するような、経済活動が実際に再加速しつつある可能性は高くない。
FRBの今後の政策は、SVBの問題の情勢次第で大きく変わり、事態は極めて流動的なのでまったくわからなくなったといってもいい。
筆者が想定するとおり、当局の危機対応が効果を発揮するとしても、金融システムの揺らぎが収まるまでは時間が必要とみられる。その中で21~22日のFOMC(連邦公開市場委員会)では0.25%の利上げがあるかどうかは、ほぼ五分五分だと思われる。あえていえば、欧州大手金融機関の株価急落へと波及した中で、金融システム安定化を徹底するために、一時的な利上げ見送りを選択するのではないか。
筆者はアメリカ経済について、潜在成長率を下回るペースでの低成長の局面が続くと予想しており、景気後退を伴う落ち込みに至る可能性は低下しつつあると考えている。
そして、経済の低成長が続くのなら、インフレが再び過熱する可能性も高くないはずだ。今後、銀行破綻処理をめぐる当局の対応や政治的な思惑がくすぶるので、同国株式市場は短期的にはもう一段下げるなど不安定に推移する可能性もありそうだ。
だが、銀行破綻が起きたことを契機に、主要株式指数が昨年10月の安値水準まで再び下落基調に転じる可能性が高まったとは、現時点で考えていない。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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