人口急増の「流山市」本当に住みやすい街なのか 住民からは学校や地域の「格差」を指摘する声も
石田教授は、市内に地域間の格差が生じていると指摘する。
市を東西南北に分けると、北部だけは人口が減り高齢化が進む。市の推計では、「0歳」から「85歳以上」までを5歳ごとに分けた場合、2030年には85歳以上が人口ピラミッドでもっとも多くなっている。
その北部にあるのが東武アーバンパークラインの「江戸川台駅」。1960年代に開発され一戸建て中心の住宅街が整備され、人口が急増した一帯だ。東急東横線の「田園調布」をモチーフに駅前から道路が放射状に整備されており、当時は今のおおたかの森と同様に、主に安定した収入がある子育て世帯が流入した。
「昔は若い人も子どもも多くて、商店街もにぎやかだったけどねえ」(地元の70代男性)。今は駅前の商店街はシャッターが目立ち、日中も街は静かだ。
石田教授は市内のさまざまな地域の住民と対話しているが、江戸川台などTX以外の沿線住民などからは、「市はおおたかの森とそこに移り住んできた住民ばかりを見ている」との諦めにも近い愚痴をよく聞かされるという。
駅から見えるのは森ではなくマンション
「江戸川台や、私が住む南流山では80年代に移り住んできた人たちが数多くいますが、すでに子どもが独立して市外へ出ていった高齢者層が多い。最近移り住んできた子育て世代とは、行政に求めるものがまったく違います。長く市に税金を納めてきたのに、市が発信しているキラキラ感をまったく実感できない住民がたくさんいるのが現実です」(石田教授)
近年、転居してきた住民からも、想定外の開発の速さに戸惑う声が出ている。
「都心から一番近い森のまち」と宣伝した流山市だが、おおたかの森駅から見えるのは森ではなく、これでもかと林立するマンションだ。
12年ほど前に家族で引っ越してきたという40代の女性は、「自然が残っていることを期待して引っ越して来ましたが、今はもうマンションばかりですよね。ある程度人が増えたら、今度は周辺の環境整備に移るのだろうと期待していましたが……。おおむね暮らしやすいですが、渋滞などの弊害も出ていますし、この開発はどこで止まるんだろう……とは感じています」と複雑な心境を語る。
そもそも、かつて希少な野生動物だったオオタカが繁殖する森が近くにあることにちなんで名づけられた「おおたかの森駅」なのだが、その「市野谷の森」は開発によりほぼ半分に減った。