「脱サラしてプロ棋士に」"非エリート"が叶えた夢 小山怜央「震災を乗り越え、20年挑戦し続けた」

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「小山さんからアルバイトを探すと聞いて、あれだけの棋力を持っていながら、それを活かさないのは勿体無いと思いました。私が奨励会のときから、アマに小山さんという強い人がいるのは聞いていましたから。それで、よかったら私の将棋教室で講師をしないかと誘ったんです」

甲斐は奨励会に12歳で入会し、三段リーグでは昇段の一歩手前の成績まで残したが、プロ入りは果たせずに2018年に26歳で年齢制限により退会した。歳は怜央よりも1歳上になる。退会後は「KAI将棋教室」を開設し、指導者としての道を選んだ。甲斐が怜央を教室に誘ったときのことを話す。

「現在のアマ棋界のレベルは非常に高く、その中で勝ち上がった小山さんの実績は本当にすごいです。それでも会社を辞めて編入試験を目指すことは簡単には決意できない。講師を正式に依頼する前に、一度食事をしてゆっくり話をしたんです。

彼は『プロになりたい気持ちもあるのですが、将棋がもう少し強くなりたい。そのために本格的に勉強できるのは20代後半の今しかない』と言いました。その考え方に、僕らはものすごく共感できる。将棋で生計を立てたいとは違った、本当に芯のところにある欲求ですから。その言葉を聞いて、自分にできることでお手伝いしたいと思ったんです」

困難だった編入試験

怜央は退職後1年半を経て編入試験資格を獲得した。規定の成績に達するまで、会社員時代から足掛け4年もかかった。

試験では初戦、2戦目と公式戦で高勝率の若手2人を連覇する。勢いに乗ったかに見えたが、3戦目に敗れた。

「合格を意識せずに臨んでいたのですが、2勝して、絶対逃せないという気持ちが強くなりました。受験料の50万円は試験期間中に振り込めばいいのですが、3戦目の前に支払わないとまずい気がしてきて、急いで入金したり。結果、そこで負けてしまって、このまま流れが変わってしまうのではないかと、気になりはじめてしまったんです」

そんな中で師匠の北島忠雄七段からメールが届く。

〈困難の先に成長があると信じます〉

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