東洋ゴムの免震ゴムデータ偽装は泥沼状態に 新たに195棟にも被害が拡大する恐れ

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すでに不適合と決まった55棟について、東洋ゴムは3月30日、震度6強~7程度の地震でも建物の倒壊のおそれはない、という調査結果を発表。太田昭宏国交相は翌31日の会見で「震度7の最大震度にも耐えうることが証明されたのは意義がある」と述べた。

ただし調査では、国の定める数値ギリギリで合格、となった物件もある。国交省建築指導課は「(変形率の)数値が基準以下であること、それが判断基準」とするのみ。該当物件に居住する人がこれで一安心とはいかないだろう。

東洋ゴムは不適合品すべての交換に応じる方針だ。基準に適合する免震ゴムを作り、あらためて大臣認定を取得し直さないと、製品は納入できない。早期交換の実現には他社の協力が不可欠である。

全基を交換すれば100億円以上

焦点となる高減衰ゴムは、ブリヂストンが8割、東洋ゴムが2割と、ほぼシェアを分け合う。ブリヂストンは求めがあれば協力する意向だが、製品の細かい仕様は会社間で異なるという。「免震ゴムは受注品のため、代替製品の仕様が決まり次第、一から生産を始める」(ブリヂストン)。

バークレイズ証券の三浦隆史アナリストは、免震ゴムの交換コストを1基約500万円と推定。全55棟・2052基を交換すれば、100億~150億円程度かかると見積もる。一方で前期の営業利益の95%をタイヤ事業が占め、免震ゴムの比率はわずかと、業績への影響は小さい。

それでも、データ偽装を繰り返す、東洋ゴムの姿勢が厳しく問われる現実は変わらない。国交省としては、第三者委員会を月1回ペースで開き、夏までに原因究明、再発防止策の提言を取りまとめる予定だ。今後、この問題はさらに広がりを見せる可能性もある。

「週刊東洋経済」2015年4月11日号<6日発売>「核心リポート07」を転載)

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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