やる気に満ちあふれる「目標設定」の絶妙な立て方 タスク達成を想定するか、行動の意味に主眼置くか

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「私は、何かが欲しくなったら、たいてい手に入れるために全力を出します」「好ましいチャンスに出会うとわくわくします」
「私は、失敗することを心配します」「批判や叱責を受けると、かなり傷つきます」(24ページより)

全力で入手するのであれば接近タイプ、失敗や批判が気になるなら回避タイプというわけだ。

なお目標に関していえば、接近型目標のほうがわくわくするものかもしれない。だが、回避型目標のほうが、より緊急性をおびるという利点もあるようだ。その例として、次のふたつの文章を埋めてみてほしいと著者は提案している。

A 「[ ]を阻止しなければならない」
B 「[  ]を達成したい」
(26ページより)

両者を比べてみれば、Aの義務目標のほうが切迫感があり、楽しそうではない。対するBの理想目標は楽しそうで、長期的に努力を続けていくことも比較的容易だと感じさせる。

つまり「損をしない」という目標を掲げたほうが、「獲得する」という目標を掲げるよりも、「これは緊急だ」という思いにつながりやすい。損をしないためなら、あなたは迅速に行動を起こす。何かを獲得するためなら、あなたは腰を据えてふんばる我慢強さを発揮する。(26〜27ページより)

自分にはどちらの型が合うのか

こうした「接近/回避」の細かい区別を知っておくと、自分にはどちらの型が合うのかがわかるだろう。それだけでなく、「いまのシチュエーションならどちらの型のほうが効果的なのか」と判断し、最善の目標設定につなげることもできるはずだ。

一般論としては、望ましい成功や健康状態に接近する目標を定義したほうが、失敗や病気を回避する目標を定義するよりも、意欲がわきやすい。回避(しない)という観点ではなく、接近(する)という観点からひとまず目標を設定し、そこから微調整をしていくのがよいだろう。(26〜27ページより)

以後の章にもいえることだが、著者の主張は具体的であるため、読者は自身にあてはめて考えやすいはず。そのため目標を設定するにあたっては、いや、モチベーションを強力に向上させられるようになるためにも、大きく役立ってくれそうだ。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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