フルオレセイン染色による涙の破壊パターンを見る方法は「眼表面層別診断(TFOD)」と呼ばれ、世界に先駆けて、横井さんのドライアイ外来と海外との共同研究で独自に開発した。
この結果に基づいて、眼表面の不足成分を補充する「眼表面層別治療(TFOT)」を行っている。これは、軽症なら成分が涙に近い人工涙液やヒアルロン酸製剤、水分やムチンの分泌を促進するジクアホソルナトリウム(ジクアス)、ムチンを作って摩擦を減らすレバミピド(ムコスタ)などの目薬を使った治療だ。
「ジクアホソルナトリウムに関しては、これまで1日6回の点眼が必要だったのですが、2022年11月に3回で済むジクアスLXという薬が出ました。半分の点眼回数でも同様の効果が出ます」(横井さん)
コンタクトレンズも、近年、性能が上がり、いいレンズが登場している。
「いわゆる『生コンタクト』といわれるものです。水分を含む層がレンズの表面を覆っているので潤いを保つことができます」(横井さん)
重症の人には手術をすることも
重症の涙液減少には、上下のまぶたにある涙点(涙の排出口)をシリコンの栓で閉鎖する「涙点プラグ」治療が行われる。
「人は1日1万5000回ほど瞬きをしているので、外れることもありますが、すぐ入れ直すことができます。外れるたびに0.1ミリずつ涙点が大きくなるため、何度も外れるようだと、入れるサイズのプラグがなくなります。その場合には涙点閉鎖術という手術で涙点を閉じることになります」(横井さん)
ドライアイは、乾きを感じたときに市販の目薬でしのぎ、症状が弱まると目薬の使用を止めて悪化するというのを繰り返す人が多い。それをいかに適切な点眼でコントロールできるようにするかが治療のポイントだ。うまくいけば、最初は月1回の来院が、3カ月に1回、半年に1回となっていき、5〜7割の人は点眼だけで改善するという。
「眼科を受診せずにいると目の神経が過敏になって、無神経因性疼痛あるいは神経障害性疼痛などという状態になることがあります。進行すると、目の表面が風に当たっただけで痛むアロディニア(疼痛をもたらさない刺激が疼痛につながる状態)になることもあると言われています」
と横井さん。そうなるとかなり難治になるため、早く気づいて治療を受けたほうがいいだろう。
いろいろな「眼表面疾患」を合併する複合型のドライアイもある。しっかり診断して適切な治療に臨んでくれるという意味では、たとえば「ドライアイ研究会」に登録している眼科クリニックなどがある。こうした医師のもとで診てもらうことが重要だ。
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(取材・文/伊波達也)
横井則彦医師
1984年、京都府立医科大学卒業。86年、同学眼科学教室助手。95年、同学講師。96年、オックスフォード大学研究員、99年、京都府立医科大学眼科学教室准教授を経て、2016年より現職。現在、京都府立医科大学病院眼科でドライアイ専門外来を担当し、ドライアイ研究会の世話人代表を務める。
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