「初代ヴィッツ」小型ハッチバックの宿命と葛藤 現在でもヤリスとして継続、その原点に迫る

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初代ヴィッツ
1999年にデビューした初代ヴィッツ(写真:トヨタ自動車)
20~30年以上経った今でも語り継がれるクルマが、続々と自動車メーカーから投入された1990年代。その頃の熱気をつくったクルマたちがそれぞれ生まれた歴史や今に何を残したかの意味を「東洋経済オンライン自動車最前線」の書き手たちが連ねていく。

トヨタ「ヴィッツ」は、1999年に誕生した。それまでの「スターレット」にかわるコンパクトなハッチバック車として登場し、海外では「ヤリス」の名で販売された。

トヨタの大衆車として、通商産業省(現・経済産業省)によって1950年代半ばに考案されていた国民車構想を具現化した「パブリカ」の上級車として設定されたスターレットは、質感が高く、レースではDOHCエンジンが特別に仕立てられ、日産「サニー」と雌雄を決するなど、小型ながらトヨタの期待を背負った車種だった。

だが、時代が進むにつれ、スターレットは、パブリカに通じる大衆車の色合いが濃くなっていく。1980年代後半の3代目には、高性能エンジン搭載モデルも存在したが、全体を通し見ると販売台数を気にする大衆車として、実用は満たされても特徴をつかみにくい小型ハッチバック車となっていた。

小型ハッチバックの魅力を再確認させたヴィッツ

サイドフォルム
初代ヴィッツのサイドフォルム(写真:トヨタ自動車)
ヴィッツRS
2000年に新設定されたスポーツグレードのRS(写真:トヨタ自動車)

そこから、改めて小型ハッチバック車の魅力を強く発揮させたのが「ヴィッツ」だった。単に実用性を満たしたハッチバック車ではなく、外観も俊敏で壮快な走りを期待させる引き締まった造形となり、それでいて後席にもきちんと座れる空間を確保していた。運転席前のダッシュボードにはセンターメーターを採用し、目新しさを覚えさせた。当初のエンジンは排気量1000ccの直列4気筒のみという簡素な車種構成だったが、運転を楽しめるクルマだった。

2代目ヴィッツ
2005年のフルモデルチェンジで2代目となったヴィッツ(写真:トヨタ自動車)

その衝撃はあまりに強く、それによって人気も得たため、2代目へのモデルチェンジですでに苦悩が見えはじめたといえるのではないか。初代の人気を継承するため、外観はあまり大きく変えず、車体は若干大きくなっていた。ヴィッツのよさは継承されたが、初代にあった小型ハッチバックとしての明快さが薄れはじめていた。

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