時代を先取りした意欲作
一時期ほどの人気はないとはいえ、いまなお根強い支持を受けるミニバン。日本でこのスタイルがメジャーになったのは1990年代に入ってからだと思っているが、その前から3列シートの乗用車はあった。“ワンボックス”と呼ばれたクルマたちだ。
ワンボックスというと、いまではトヨタ自動車の「ハイエース」が代表格になっている。ただし、ハイエースが誕生したのは1967年であり、前年にデビューしたマツダ「ボンゴ」がそのパイオニアだ。当時は4輪駆動車のことをジープと呼んだように、他メーカーのワンボックスであってもボンゴと呼んでいたという。
その後、日産自動車や三菱自動車工業などからも同様の車種が登場したが、いずれももっぱら国内向けだった。当時から日本のメーカーにとって重要だったアメリカ市場は、はるかに大柄なフルサイズのバンが主流で、カテゴリーが別だったからだ。
しかし、1980年代になるとそのアメリカでひとまわり小柄な、その名も“ミニバン”が登場。日本のメーカーも、このカテゴリーへの参入を考えることになる。ここでトヨタが生み出したのが「エスティマ」(海外名:プレヴィア)だった。
最大の特徴はフロントエンジンではなく、床下にエンジンを寝かせて搭載した“アンダーフロアミッドシップ方式”だったこと。ノーズが不要であることから、スタイリングは全体を曲面で覆ったワンモーションフォルムとしており、当時のCMでは「トヨタの天才タマゴ」と称していた。
実はこの頃、トヨタでは2ストロークエンジンの開発を進めており、エスティマに積む予定だった。現在の主流である4ストロークが、1つの行程で各シリンダーの上下の動きが4回(つまり2往復)必要なのに対し、2ストロークは半分の2回で済む。つまり、同じ排気量でも力が出せるから効率がよい、というわけだ。
アンダーフロアミッドシップ方式のエスティマは、このエンジンを搭載する前提のパッケージングだった。
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