韓国は、第2次世界大戦後、長らく軍事政権の時代が続きました。市民生活は苦しいながらも、直接政府を批判することはできません。そんななか、間接的に自分の思いを表現する手段として用いられたのが、詩だったのです。
このように詩は暮らしに深く根差した文化であり、そのことはリュ・シファさんがあとがきに、「幼いころに詩を書く授業があった」と書いていることからもうかがえます。
韓国ドラマには、詩でラブレターをしたためるというシーンもけっこう登場しますが、日本人の感覚からすると、「きっとドラマ上の演出でしょう」と思いますよね? 実は、単なる演出ではないのです。現実世界でも、本当にそういうことが行われています。
文学がスターの言葉に影響している
アイドルの愛読書の中に、詩集があることも珍しくありません。日本で韓国の詩集が出版されると「K-POPスターの○○も泣いた!」なんてキャッチコピーをよく見かけますが、本当に泣いていると思いますよ。
詩集しかり、読書をしているスターの言葉の厚みには、文学の影響が間違いなくあると感じます。それは自分自身の経験に置き換えても、近いことが言えるからです。
僕はあまり本を読むようなキャラクターに見られないのですが、実は中学生のころから読書が大好きで、これまでたくさんの本を読んできました。そこから得た知識は、韓流やK-POPのイベントMCをするときに、直接関係があるわけではありません。でも、スターのみなさんから「古家さん、なんでそんな話を知っているのですか?」と驚かれることが多いのは、読書をしてきたことがベースにあるように思います。
相手が「きっとわからないだろう」と思いつつも、その話してきたトピックに対してリアクションができると、意外と盛り上がれる。MCという言葉を介したコミュニケーションや、スターの話を引き出すことが大切な職業にとって、「一見、余計な知識」であるほど必要なものなのです。
もちろんスターは読書にかぎらず、幼いころから自己表現の訓練をしているからこそ、その言葉に人の心を動かす力強さがあるのだと思います。そして彼らのメッセージが、ファンダム(注:ファンが集まって形成するコミュニティー全体を指す)を引き寄せる力になっているとも言えるでしょう。
(構成:保手濱奈美)
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