「リスキリング」に失敗する人に欠ける4大要素 プランを立てることで成功率は格段に変わる

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簡単にまとめると、以下のような日本の労働市場の問題を一挙に解決してくれる可能性があることから、リスキリングは重要視されている。

・一向に上がらない賃金
・国際競争力が上がらない日本の会社、事業
・少子高齢化による労働力不足
・自治体や企業のデジタル化への対応の遅れ

このような問題を一挙に解決するために、主にデジタル分野でのリスキリングを社会全体や個人レベルで行うことは有効だと考えられている。

日本は中高年の人口が多く、かつ年功序列システムが長らく適用されていたこともあり、社会全体や企業が「デジタルツールに苦手意識を持った中高年向けの仕様」になってしまっている。

この状況を改善していくためにも、若手人材だけでなく、中高年に対しても最低限のデジタル教育は必須だと考える(ガラケーからスマートフォンへ移行できたことを考えれば、不可能ではないだろう)。

デジタル分野のリスキリングの図(画像:筆者提供)

自治体や企業のリスキリング事例

個人レベルでのリスキリングの話をする前に、自治体や企業でのリスキリング事例をご紹介したい。

アメリカでは、リスキリングを国家レベルで推し進めるため、スキルを一元管理し、可視化するためのインフラである「LER(Learning and Employment Records)を整備している。

このLERというインフラがあれば、個人の学習履歴や雇用履歴を一括で公的に記録することができ、それをもとに自身のキャリアプランを構築したり、転職活動を行うことができる。

LERのような社会システムが整備されることで、市場で求められるスキルが明確になり、そのスキルを学ぶための学習や、そのスキルを活かせる仕事をひも付けることができる。

結果として、就職や年収アップにつながるスキルがより可視化され、個人が効率的にキャリアプランを作ることができるだけでなく、リスキリングのモチベーションも維持されやすくなる。

他方、日本においても、東京都が2020年から、デジタル人材を育成し、就業支援を行う「デジタル人材育成支援事業」を実施している。IT未経験者向けにプログラミングやITインフラといった分野の学習支援を行い、キャリア面談や求人紹介、面接対策を行い、就業決定までサポートしている。

3年間の事業で数百人規模のIT未経験者が公的な職業訓練を受講して、都内のIT企業に就業しており、自治体が実施するリスキリングモデルでは国内最大規模を誇る。

次ページ個人のリスキリングの現状
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