ことわっておきますが、この1万時間という数値は1つの目安にすぎないし、統計的な根拠があるわけでもありません。
実際はこの時間よりもはるかに早く一流になる人もいるし、その逆だってあります。時間の量だけがすべてを決めるわけではないのです。それでもなお、この考え方はとても素敵だと僕は思います。
「自律」って、大人でもむずかしい
とはいっても、「どんな自分になりたいか」を考えたり、「働く自分」を思い描いたりすることは、そんなにかんたんじゃありません。
特に明日、明後日、1週間先などでなく何年か先の未来の自分となると、考え出したところで、うまくいきっこありません。
それは「自分を哲学する土台」が整っていないからです。
その土台とは、「自律」です。「自立」ではありませんよ。
僕の考える「自律」とは、「自分で考え、判断し、決定し、行動すること」。
「自分で考えて、決めて、それを行動に移す」。一見かんたんなようにも思えるけど、じつは大人にとっても、とてもむずかしいことです。その理由は「人間の脳のしくみ」にあります。
ここからのお話は少し専門的になるけど、僕の友人でもある応用神経科学者の青砥瑞人(あおと・みずと)さんから学んだことをベースに、僕なりの言葉で伝えたいと思います。
脳の重さは、一般的な体型の人の全体重に占める割合の2%ほど。ところが、脳は一日のうちに、人が消費するエネルギーの4分の1、25%も使います。
つまり脳は、重さのわりにとてもたくさんのエネルギーを使う、燃費の悪い器官なんです。
そこで人間の進化の途上で、脳には効率のよさを追求する「しくみ」が備わりました。
たとえば、新たに行動を起こすときに必要なエネルギーを「10」とすると、その行動を何度も繰り返すうちに、「3」くらいのエネルギーでできるように変化していくのです。
だから、最初のうちは「これをやるぞ!」と強く意識しなければできなかったことも、何度か繰り返すうちに、無意識のうちに処理できるようになっていくのです。人間って、すごいと思いませんか。
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