iOS、Android両方のスマートフォンアプリをいち早く投入したのも『minne』だ。その結果、CMを流すまではPCからの売り上げが多かったが、今はPCとスマホアプリ、購入はほぼ半々になったという。ちょっとした家事の合間にスマホアプリで買い物ができるのは、忙しい主婦にとっては魅力的だ。特に子ども向けのハンドメイド品は既製品とは違った温かみがあり、作る時間のない主婦にとってはうれしいもの。「名付けサービスをしている作家さんも多い。小売店とは違って細かいオーダーに応えられるのが、ハンドメイド市場ならでは」(永椎氏)
さらに普通のネットショップとは違って、購入者が気軽にお礼を作家に伝えることができるインターフェースとなっているのもポイントのひとつだ。作品を送りましたというメッセージもLINE感覚で画面からピピッと送ることができる。「ハンドメイド品だからこそ、コミュニケーションが非常に重要な要素なので、そういう環境づくりをとても大事にしている。手に取ることはできなくても、『minne』だと安心して買い物できる、かわいいものが見つかる、そんな風に思ってもらえるよう取り組んでいく」と永椎氏。日本の伝統工芸や昔ながらの職人にもスポットを当てていく考えだ。
プロ志向の作家を支援する「iichi」
『iichi』は2011年4月、博報堂DYグループの社内ベンチャー事業としてスタートし、現在は鎌倉に本社を構えるiichiが運営している。いちばんの特色は、プロ志向の作家に焦点を当てていること。
「もともと本職の方の仕事を広げ、プロを目指す人たちの支援をしようと立ち上がった経緯がある。趣味でやっている人を対象にしていなかったので、いわゆるプロ比率は4割ほどで、他サイトに比べるとけっこう高いと思う」と飯沼社長。
利用者は40代女性がメジャーゾーンで、ちょっとかわいいから買うというより、暮らしのなかで使い続けたいものを揃えるという感覚をもった利用者が多いという。
商品単価、購入単価の平均はだいたい5000~6000円。「最近では年間1000万円を売り上げる作家も出てきた。うちはハンドメイドというよりもクラフト系が多い。木工とか家具など単価の高いジャンルが強く、一人当たりの取扱高が高いほうではないか」と佐藤氏。
販売手数料を他サイトに比べると若干高めの設定としているのは、「サポートを丁寧にしている。作家や職人さんのなかには、PCやインターネットを使うことに苦手意識を持つ人がいる。丁寧にレクチャーすると、これまでパソコンを触ったことがなかった人でも売り上げを伸ばすケースも多い。あとは写真の撮り方講座を頻繁に開催している。いい作品でも写真が残念な出来だと難しいですから」(飯沼氏)。
観光客が絶えない小町通りに本社を構える『iichi』。近くに設けた実店舗では、2~3週間ごとに作家の作品を入れ替えている。飯沼社長は、「そもそも、ITとモノづくりって相性がそんなによくないと思っていて。効率を重視すると、モノづくりの背景や作者の考えや思いが抜け落ちていく。なので、オンライン販売とコミュニケーションや実際のリアル店舗を組み合わせてサービスを育てていきたい」と語る。
社員のワークライフバランスも重視している。「忙しくて“生活がない”人間が、生活のものを提供すると、単なる商売の道具みたいになってしまう。土日はしっかり休んでギャラリー巡りをするなど、そういった時間をなるべく多く取ってほしい」(飯沼氏)。
4月から1人につき月5000円までクラフト品を買うことができる“社内購入手当て”を始めるのも、「自分で実際に触ってみないとものの善し悪しはわからない。自分自身で購入し、作家と直接話すことでいろいろなことを学んでほしい」からだ。
作り手の気持ちに寄り添い、適度な規模感を大切にしたビジネスを展開していきたいというのが『iichi』のスタンスだ。
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