「餃子の雪松」が全国制覇しても絶対変えない流儀 現金商売の原点は“商店街の息子たち"にあり

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少しユニークな社名は、もともと同社代表の長谷川保さんが経営する会社だからだ。実は、高野内さんと長谷川さんは幼なじみ。同じ小学校と中学校の同級生で、大人になってからも交流が続く。この事業に関わる前、高野内さんは靴の輸入販売業、長谷川さんはヘアカットサロンや不動産業も営んでいた。「何か一緒にやりたいね」と話していたという。

そんな飲食業未経験だった2人が、「雪松」と出合い、現金商売に行き着くのは、血縁と地縁が関係していた。

YESの高野内マーケティング部長。商売を行う家庭で育った(写真:YES、撮影のためマスクを外しています)

群馬県水上温泉「お食事処 雪松」の味

群馬県みなかみ町に「水上温泉」という観光地がある。人気温泉地も多い同県で、かつては「草津温泉」「伊香保温泉」に次ぐ存在だったと聞くが、現在は往年の勢いがない。

当地で昭和15(1940)年に創業して営業中なのが、「お食事処 雪松」だ。歴史は長いが、町中華や温泉街の食堂といった風情でハードルも高くない。メニューもチャーハン、オムライス、ラーメン、唐揚げなど庶民的で、芸能人やプロアスリートがひそかに訪れる人気店でもあった。

「餃子が看板商品でした。この店を切り盛りしていたのが3代目店主の松井茂さん(2020年に77歳で死去)で、長谷川の叔父になります。3代目が高齢になられ、4代目を継ぐ予定だった息子さん、そして奥さんが病気で亡くなった後、長谷川が『雪松の味』を引き継ぐことを決意し、幼なじみだった私も一緒にやることになったのです。

以前から『店の権利を譲ってほしい』『FC(フランチャイズチェーン)でやりたい』という声も多くありましたが、3代目はすべて断っていました」(高野内さん)

その中でも「餃子」に絞ったのは、消費者に身近な料理だったことと、店の歴史や味へのストーリー性があったからだという。

次ページ「亀戸餃子」や「みんみん」「浜太郎」なども研究
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