「いい会社」に共通している日本的経営観の中身 「理念と経営の言行一致」は終わりなき旅路
それでは、ステップごとに詳細を見ていきましょう。
前提として、社員全員の旗印となるべきものが言語化されている必要があります。「理念」はもちろんのこと、理念をより現場向けにブレイクダウンした「マネジメントポリシー」などがそれにあたります。ポリシーとは方針・指針を意味し、一般的には「人材(財)マネジメントポリシー」といった形をとることも多いです。
理念を経営活動全体にゆきわたらせるためには、体現するために必要な仕組みをあらゆる局面に仕込んでいく必要があります。
たとえば事業側の仕組みとしては、営業ツールや顧客応対マニュアル、商品開発、あるいは商品を世の中に出す際に、それが理念を体現しているかどうかを確認するチェック項目や、実践・実現するための事業を起案する新規事業立案制度などがあるでしょう。
理念を社外に伝えていくためのコーポレートサイトや、コンセプトブックのようなものも仕組みと言えるかもしれません。ただしその場合は、運用方法も含めて考えたほうがいいでしょう。
組織側の仕組みとしては、評価制度や表彰制度、研修制度、目標管理制度、異動に関する公募制度などがあげられるでしょう。たとえば評価制度や表彰制度は、成果だけでなくプロセスも評価しているかどうかという点が重要です。理念に基づいた行動はちゃんと評価する。一方で、どれだけ成果が上がっていても、理念に沿っていない場合は評価しない。つまり、理念を実践している人が自然と評価される制度になっていることが大切です。すると、自社の志に貢献する流れが自然とできてきます。
「うちでは、いろんな仕組みが生まれては気づくと消えているんです……」
こんな話をお客様から聞くこともあります。言うまでもなく、仕組みは運用されてこそ意味がある。しかも一定期間のみの運用ではなく、習慣になるまで日々試行錯誤しながら続けていくことが重要です。
しかし、組織にひとつの習慣をつくるのはなかなか大変なことです。たとえば「フィードバックし合う組織」を掲げてさまざまな取り組みを行っても、習慣として全社に根づくまでには数年はかかります。繰り返し必要性を説明したり、打ち合わせの最後には必ず「5分間フィードバック」することをルール化したりすることで、少しずつ当たり前になってくるのです。
フィードバックひとつとってもそのくらいの手間と時間がかかるのですから、理念の実践を習慣化するのはとても根気のいる作業です。そのための仕組みをいくつか紹介すると、たとえば「志を体現した仕事」を定期的に共有する場をつくったり、日々の仕事のなかに「理念に触れる時間」をつくったり。
他にも定期的な1on1の面談を通じて評価制度のプロセス部分(=志を実践しているか)をチェックしたり、定期的な部会やチーム会を行っている場合は、理念に沿った行動や理念についての考えを共有する時間をとったりするのも効果的です。もし日報を書いているのであれば、部下の日報を見るたびに「ここはうちの理念に合っている」とフィードバックするのもいいでしょう。
「定期的」と繰り返しましたが、まさに意図的に、定期的に行うことが大切です。仕組みは習慣化されることで、やがて企業独自のカルチャーへと育っていきます。
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