「いい会社」に共通している日本的経営観の中身 「理念と経営の言行一致」は終わりなき旅路

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この「誰かのために」や「社会に貢献する」という考え方は、日本の企業においては古くから当たり前とされてきたことです。近江商人の「三方(さんぽう)よし」は有名な思想ですね。

資本主義の父と言われた渋沢栄一が大切にしたもののなかにも、「商道徳」というものがあります。儲けを独占したり、礼節を軽んじたりをよしとしない。人としてどう振る舞うかを大事にしてビジネスを実践しようという考え方です。

志とは「自分たちにできること、自分たち“ならでは”のことで社会に役立つこと」だと、私は定義しています。この日本的経営観、いわば「志経営」は、これからの社会に必要な経営思想ではないでしょうか。

言語化・仕組み化・習慣化で言行一致の状態をつくる

志を実践し、実現に向かうためには、いかに事業と組織の両面において、どこを切り取っても志ドリブンの状態をつくれるかがポイントになります。志を掲げる以上、事業はそれ自体がちゃんと志の実現につながっていること、そして組織は志を実践するために最適化されたものになっていることが重要です。

たとえば営業・販売はお客様にサービスを提供する場面で、しっかりと理念に沿った行動をとれているか。広報が世の中に出す情報は理念に反していないか。組織構造や運営の方針、仕組みはちゃんと理念と整合性がとれているか。採用活動では理念に共感する人材を集められているか。

自社の組織を点検し、改善の余地がある場合は言行一致に近づくチャンスです。

「少しくらいなら大丈夫だろう」と思われるかもしれませんが、今の時代、小さな綻びが気づけば修復不可能な大きなものになりかねません。真に言行一致を図るためには、あらゆる企業活動の細部にまで理念をゆきわたらせる必要があります。

では、そのためには何が必要なのでしょうか。

大前提として、「理念と経営の言行一致」は終わりなき旅路です。やっとの思いでゴールにたどり着いたと思ったら、その奥にさらに高い山がそびえている。ため息をつきたくなるような状況ですが、それでも毎日ワクワクしながら、自分たちが掲げた理想に向かって一歩一歩地道に進んでいる企業があります。そういった企業を分析していくと、決まってひとつのフレームワークを実践しているのです。それが、理念を経営全体に落とし込むためのステップを表現した「言語化・仕組み化・習慣化」です。

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