幸福を哲学で突き詰めた人にこそ見えている視点 偶然でなくどうつかみ取るか、それが問題だ
「哲学」と聞いただけで、無意識のうちに身構えてしまうという方も少なくはないかもしれない。なにしろ“難しいもの”というイメージは根強いし、そもそも“いま、なぜ哲学なのか?”と問われたときに返すべき明確な答えは、必ずしも多く存在しないからだ。
しかし、だからこそ『哲学100の基本』(東洋経済新報社)の著者、岡本裕一朗氏のこの説明には納得できるのではないかと思う。
物事を考えるとき、哲学は広い視野と長いスパンでアプローチします。日々進行している出来事に対して、一歩身を引いたうえで、「これはそもそもどのような意味なのか?」と問い直し、世界をどう見たらいいのか、新しいメガネを考案するのです。(「はじめに」より)>
つまり本書も、こうした考え方に基づいて書かれているわけである。しかも(少なくとも個人的には)ありがたく感じたのが、100項目を「人間」「知識」「道徳」などのワンフレーズでまとめ、さまざまな哲学に関するテーマを網羅的に理解できるように構成されている点。
哲学に関する書籍を読もうというときには、難解さに加え、最初から最後まで順序立てて読まなければならないというような不文律に左右されてしまう可能性がある。だが、こうしたスタイルであるため、どこからでも読むことができるわけだ。いいかえれば、そこでひとつハードルが下がる。
今回はそんな本書のなかから、人間にとって普遍的な問題だともいえる「幸福」についての項目をクローズアップしてみたい。
幸福をどうつかみ取るか、それが問題だ
語源から考えた場合、「幸福(英 Happiness、独 Glück、仏 Bonheur)」ということばは「たまたま偶然もらったもの」という意味を持っているのだそうだ。だとすればそれは「幸運」と同義であり、日本に古くからある「棚からぼた餅」という成句も「幸運」を意味するということになる。
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