「人を攻撃する人」ほど認知症になりやすいワケ 怒りは表現してしまうとどんどん大きくなる

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脳と身体の関係では、人間は考えてから行動するのではなく、「行動してから考える」性質があるといわれています。つまり、考えたり心で念じたりすることよりも、実際の行動の方が脳に与える影響が強いということです。

日常生活であれ、ネット上であれ、他人をののしるような行動を繰り返していると、自然と「ののしり体質」になっていってしまうのです。

人格は日常の積み重ねです。

表面上をいくら取り繕ったとしても、日頃からの「ののしりグセ」がついていれば、徐々に徐々に、態度や雰囲気にあらわれるようになっていきます。

怒りは表現してしまうとどんどん大きくなる

これに関連して、アイオワ大学のブッシュマンらの研究があります。

実験では、被験者たちに「怒ったときはパンチング・バッグを殴ると、怒りの解消に効果的」という記事を読ませて、そのあと怒らせてみて、どんな行動に出るかを調査したものです(テレビ番組のような実験ですね……)。

その結果、パンチング・バッグを殴った被験者はバッグを叩くことを楽しんだものの、怒りはおさまるどころか、怒りの対象の相手、ひいては関係ない人にまで怒りをぶつけるようになったそうです。

つまり、怒りの行動は、表現してしまうと広がってしまうということです。したがって、イライラしたとき、暴言を吐きたいときは、瞬間的に行動するのではなく、我慢をしてください。具体的には、何か言いたいことがあっても、それを悪い言葉ではなく、良い言葉に言い換えようと考えてみてください。

スワースモア大学のアシュという心理学者による有名な実験ですが、ある人を形容するのに、

(1)知的な、器用な、勤勉な、温かい、決断力がある、実践的な、注意深い

(2)知的な、器用な、勤勉な、冷たい、決断力がある、実践的な、注意深い

と、2つのパターンで紹介したとき、印象にどれくらい違いがあるか調べました。

すると、後者に対する評価は否定的になりました。

しかし、見比べるとわかりますが、先の紹介で違うのはたった一語だけ、「温かい」と「冷たい」だけです。にもかかわらず、後者の評価が否定的なものが多くなったのです。

たとえば、議論などで反対意見があったとして、それが正当な内容だったとしても、ネガティブな表現、人をののしるようなニュアンスを加えてしまうと、相手の感情をむやみに刺激することになり、話し合いになりません。

次ページ「怒り」は生物としてより原始的な脳から起きる
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