デサント「V字回復」生んだ中国ビジネスの舞台裏 高級スポーツウェアとして富裕層から大人気に

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ANTAが中国全土で展開する店舗はANTAブランドだけで約1万店に上る。「日々の在庫の管理や物流を含め、それだけの膨大な数の店を運営するANTAのオペレーションスキルはものすごい。しかも、各地のデベロッパーとの太いコネクションがあるから、いい場所を押さえて出店できる」(清水取締役)。

伊藤忠によるTOBで新経営陣に切り替わったデサントは2020年、中国事業の拡大に向け、ANTAとの合弁にブランドの商標権を譲渡。それを機にANTAのデサント事業への力の入れ方はより本気になった。

問われる日本での開発力

高級スポーツウェアのブランディングに成功し、快進撃が続く中国でのデサント事業。ただし、高い品質や機能性に裏打ちされた商品の独自性があってこそのプレミアムブランドだ。現地の富裕層を惹きつける魅力的な商品が途絶えれば、今のポジションを維持し続けるのは難しい。その意味でも重要になるのが、日本における開発力だ。

部位によって編み方や密度を変え、動きやすくて蒸れにくいモーションニット。スリムでありながら、独自の3Dパターンの採用と伸縮性で動いやすいゼロパンツ。天然繊維のような優しい風合いと耐久性を兼ね備えたTシャツを中心とするタフシリーズ……。中国での売れ筋上位には、日本のデサントが国内素材メーカーなどと独自に開発した技術を採用または現地流にアレンジした商品が数多く並ぶ。

上海の旗艦店に並ぶ秋冬用の商品。スキーウェアの販売構成比自体は低いが、中国ではブランドのイメージ戦略としてスキーを前面的に打ち出している(写真:デサント)

欧米の有名デザイナーを採用するなどしてデサントチャイナは商品のデザイン力を高めているが、機能面などで独自性の高い商品を生み出すノウハウは中国にない。素材や技術の開発を担うのはあくまで日本。つまり、日本のデサントの開発力が、中国におけるデサント商品の独自性、ひいては現地でのブランド価値をも左右することになる。

新経営陣は中国事業を成長のエンジンと明確に位置付け、大阪にある開発拠点とデサントチャイナの連携を大幅に強化した。「新たな優れた素材や技術を日本からどんどん注入して、中国におけるデサントの認知度、ブランド価値をさらに上げていく」と清水取締役は話す。 

巨大な中国市場への本格進出から短期間で成功を掴んだデサント。プレミアムブランドとしての中国事業をさらに大きな柱にできるかどうかは、ANTAだけではなく、日本のデサントの力量にもかかっている。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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