デサントの近年の経営は韓国事業が支えてきた。2010年に韓国トップに就いた金勲道氏が商品企画の現地化を推し進め、韓国の消費者が好むデザインなどを取り入れた商品を投入。こうした戦略が大成功し、デサントは韓国人なら誰もが知る高級スポーツアパレルブランドになった。アジアでの商標権を持つルコックスポルティフなども現地でヒットし、一時は韓国だけで年間100億円近い利益を稼いだほどだ。
だが、2019年に韓国内で起きた大規模な反日不買運動で販売は激減。混乱の中で韓国の優秀な人材が大量に流出し、販売以外でも大きな打撃を被った。さらに新興ブランドが相次ぎ登場するなど競争が激化しており、韓国事業の足元の業績は売り上げ、利益ともかつての水準に遠く及ばない。
伊藤忠が主導したANTAとの合弁
そうした中で急成長し、新たな太い収益柱へと育った中国デサント事業。海外部門を統括する清水源也取締役は、短期間で中国でのビジネスが成長できた要因として、「1つはすでに韓国での成功モデルがあったこと。そしてもう1つは、ANTAと組めたのが非常に大きかった」と話す。
ANTAは1991年の創業で会社の歴史自体はまだ浅いが、直近のグループ売上高が1兆円に迫る巨大企業だ。スポーツシューズで高いシェアを誇るのみならず、イタリア発祥のスポーツブランド、FILAの中国事業を2009年に買収し、中国内で年間4000億円規模の売上高を誇る大人気ブランドに育て上げた実績もある。
2010年代半ばにデサントが本格的な中国進出を検討していた際、現地の合弁相手としてANTAを強く勧め、両社の仲を取り持ったのは伊藤忠だった。「デサントブランドの中国進出を成功させるには、現地の強い企業と組ませることが必須だった」。当時、伊藤忠で繊維カンパニーの幹部として香港に駐在していた清水取締役はそう振り返る。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら