その牽引役とも言えるのがデサントチャイナだ。同社は関連会社に該当するため、デサントの連結業績に反映されるのは出資比率見合いの持ち分益のみだが、それでも利益貢献度は大きい。
ロックダウンの影響があったにもかかわらず、デサントチャイナの販売は2022年も現地通貨ベースで3割近く伸長。第3四半期までの9カ月の持ち分益は23.8億円(前年同期は13.6億円)に達し、デサントの同期間の連結経常利益の2割以上を稼ぎ出した計算だ。
中国ではタウンユースの需要を取り込む
アメリカや韓国の影響を受け、中国都市部ではスポーツウェアを普段着に取り入れたアスレジャーファッションが若者やミドル世代に広く浸透している。デサントの衣料もそうしたタウンユース、いわゆる街着として購入する消費者がほとんどだ。
合弁立ち上げ当初は韓国市場の商品をそのまま販売していたが、現在は約8割が現地の消費者のニーズに合わせて中国で企画・デザインした商品。日本でのデサントはスポーツ・競技用のウェアが柱だが、中国ではあくまでタウンユースを強く意識して企画・デザインした商品が大半を占める。
ANTAは高級スポーツウェアとしてデサント事業を展開しており、ほかの有名スポーツブランドと比較して値段は非常に高い。秋冬商品を例に取ると、中心価格帯はダウンジャケットが5万~8万円台、パンツは2万円以上、長袖Tシャツも1万円台後半だ。それでも、30~40代の富裕層を中心にデサントブランドの人気は高まり、右肩上がりの販売が続く。
「デサントのようなウィンタースポーツを得意とするスポーツウェアのブランドは珍しい。富裕層を中心としたスキー人口の増加も追い風になり、中国市場ではナイキやアディダスとは違った“プレミアムスポーツブランド“として、独自のポジションを確立できている」。伊藤忠で繊維カンパニーのトップを務めた後、TOB後の2019年6月からデサントの経営を率いる小関秀一社長はそう話す。
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