「池袋ウエストゲートパーク」23年後もヒットの訳 2000年代に刺さった仕掛けがNetflixでウケた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

最近のオリジナル作品では『First Love 初恋』も話題となった。1999年の宇多田ヒカルのヒット曲をモチーフとした本作は、物語自体も1998年に高校生だった若者を主人公に、2000年代前半、そして現在とを行き来する。『全裸監督』のような過激さはないものの、ここでもちょっと昔のノスタルジーが支持される一因となっている。

地上波では放送できない、と、ちょっと昔のノスタルジー。Netflix日本オリジナル作品のヒット要素に通ずるこの2つを、『I.W.G.P.』は実は兼ね備えている。

I.W.G.P.』は、くわえタバコのシーンといった細かい演出面のみならず、中身も、暴力・薬物中毒・窃盗、警察内部の腐敗にねずみ講など、今の地上波では流さないという判断をされそうなものにあふれている。

また、ロケ撮影にこだわる堤幸彦監督の手によって、2000年当時の池袋の街が空気感そのままにおさめられているのも特徴だ。宮藤官九郎が「喋りながら書いていた」(『キネマ旬報』2002年2月下旬号)という脚本は、紛うことなき2000年の若者の喋り方が刻印されている。

単音の着信音がなるiモードの携帯電話やストラップなど、懐かしいアイテムも続々と登場する。それでいて現在も活躍する俳優たちが登場し、もちろん音楽や演出も古びていないため、セットをつくって当時の空気を再現するよりも正確で、しかも低予算で体感できるノスタルジー作品になっている。今のNetflixのニーズにも符号しているのである。

“キング”窪塚洋介がインスタで…

もちろん、今回の“再ヒット”はNetflix上のニーズに一致したということだけが理由ではなく、根底に作品の強度があったうえでの話である、ということは最後に付け加えておきたい。

今回の配信にあたって窪塚洋介はこうコメントしている。

今を生きるほとんどの人が、すぐに答えやリアクション/評価を欲しがるようになった昨今、20年以上前の作品が改めて見直されている(中略)自分にとって本当に大事なことを学ぶというのは、それなりの時間が必要なのかもしれないね?」(公式インスタグラムより)

どうしても日々の中に流されていってしまうテレビドラマの中で、流されずにど真ん中に舞い戻ってきた『I.W.G.P.』の中には、時が経ても変わらない大事なものが詰まっている。本当に大事な答えというのはきっと、すぐにはわからない「めんどくせえ!」ものなのだろう。

霜田 明寛 ライター/「チェリー」編集長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しもだ あきひろ / Akihiro shimoda

1985年・東京都生まれ。早稲田大学商学部在学中に執筆活動をはじめ、2009年発売の『テレビ局就活の極意 パンチラ見せれば通るわよっ!?』を皮切りに、3冊の就活・キャリア関連の本を執筆。企業講演・大学での就活生向けセミナー等にも多く登壇し、自身の運営する就活セミナーからも累計100名以上のアナウンサーを輩出している。また、編集長を務める『文化系WEBマガジン・チェリー』や雑誌などで記事を執筆。映画監督や俳優を多く取材し、トークイベントの司会なども担当する。自身の観点でドラマ・映画等を紹介するVoicy『シモダフルデイズ』は累計200万回再生を越える人気コンテンツに。ジャニーズタレントの仕事術をまとめた4作目の著書『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)は3万部を突破している。
Xアカウント:@akismd

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事