2022年2月24日のロシアのウクライナ侵略を機に、ドイツはそれまでの平和外交や対ロシア宥和姿勢から、「安全保障政策の転換」(ドイツ語で「時代の変わり目」Zeitenwende=ツァイテンヴェンデと呼ばれる)を成し遂げたはずだった。
しかし、戦車供与をめぐる逡巡を見れば、安保面でヨーロッパを主導するにはまだ限界があることは明らかだ。
欧州諸国の批判に押された
ショルツ・ドイツ首相は1月25日、ドイツ軍の改良型「レオパルト2A6」14台(1個中隊相当)、弾薬、保守整備をウクライナに供与すると発表した。ウクライナ戦車兵の訓練をドイツ国内で行い、欧州諸国に配備されているレオパルト2のウクライナへの供与も承認する。合わせて2個戦車大隊(1個大隊は戦車44台)を編成できる見通しという。
冬季に入りウクライナ戦争が膠着状態となる中、戦局打開の切り札として議論されてきた戦車供与問題は一応の決着を見たが、西側諸国の結束の難しさが明らかになるとともに、供与をためらったドイツに対する不信感が残る結果となった。
毎年恒例のダボス会議(1月16~20日)、ドイツ南西部ラムシュタイン米空軍基地で開かれたウクライナ軍事支援を話し合う国防相会議(20日)で、ドイツの供与表明に期待が集まった。
しかし、ショルツ・ドイツ首相、ピストリウス国防相とも供与を明言せず、欧州諸国の批判が高まった。ドイツ政府の急速な政策決定がこうした圧力に押されてのものだった印象はぬぐえない。
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