「ウクライナ激戦地」でピザを売り続ける男の1日 砲撃音の中で「温めますか」というやりとりも
ウクライナ東部の都市バフムートでアンドリー・シュベドが販売するミニピザは、1分少々あれば電子レンジで加熱できる。だが、その1分少々の間にも爆発物が落下し、窓ガラスが割れ、客が負傷したり、食堂が破壊されたりする可能性がある。シュベドの軽食堂は、ロシア軍の砲撃が激しさを増す激戦地にある。
注文には危険が伴うが、それでもチーズと肉とディルのパイは、ウクライナ人兵士や住民という、今ではかなり小さくなってしまった客層の間で一番の売れ筋だ。戦争の行方を左右する要衝バフムートは10カ月近く続く戦争でぼろぼろになった。シュベドの知る限り、今でもそこで営業を続けている軽食堂はシュベドの店だけになった。
国民の誇りと連帯の象徴になった「バフムート」
「朝には爆撃が8時から9時まで。それで午後は2時から4時まで。来るときは来るんだから、心配しても仕方ない」。シュベド(41歳)はため息をつきながら、そう言った。
バフムートにおけるウクライナの激しい防衛戦は、国民の誇りと連帯の象徴となり、「バフムートを守れ」がスローガンとなっている。12月21日夜、アメリカの議会演説で注目を浴びたウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーは、バフムートで戦う兵士たちのサインが入ったウクライナ国旗をアメリカの下院議長ナンシー・ペロシに手渡した。
その前日、ゼレンスキーはバフムートを訪れ、兵士の何人かと面会している。店にいたシュベドは、大統領には会っていないと言い、大統領が「私からベリャシ(ミートパイ)を買っていない」のは確かだ、と話した。