闘い10年、大川小「津波裁判」映画が示す悲痛な教訓 子どもの死亡を検証する「CDR」の大きな課題

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東日本大震災の津波で多くの子どもが亡くなった大川小学校。遺族らは裁判を通じて真実を知ろうとした(©2022 PAO NETWORK INC.)
2023年4月に創設されるこども家庭庁は、はたして子どもの利益を増やすのか。その真価が問われる事業の1つに、子どもの死亡を検証する「予防のための子どもの死亡検証」(チャイルド・デス・レビュー、CDR)がある。しかし、これまで厚生労働省が主管してきたモデル事業は、捜査情報の活用など、一足飛びに解決できそうもない課題が見えている。
そんななか、まさに死亡検証にかかわるドキュメンタリー映画が2月から全国で公開される。『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』。子を失った親たちが、日本の検証の実状に愕然(がくぜん)としながらも、「亡くなったのはなぜ?」と問い続けた記録だ。この映画は「言うは易く行うは難し」という現実を改めて突きつけ、「子どもど真ん中」を目指す社会に教訓を示している。

なぜ大川小だけ多数の死者を出したのか

大川小学校(宮城県石巻市)といえば、東日本大震災で津波に襲われ、近隣の小学校と比べ大きな犠牲を出したことで知られる。犠牲者は児童74人(うち4人は行方不明)、教職員10人。裏山にすぐ避難できる条件があったにもかかわらず、そこに避難をしなかったことも社会に衝撃を与えた。

「なぜこの学校だけ、このように多数の死者を出したのか」

遺族であればなおのこと、この問いが脳裏から離れず、答えを探して必死にもがいていたことは想像に難くない。

映画はその答え探し、つまり検証がその後どうなったのかを遺族の目線で追ったものだ。寺田和弘監督(51)は、マスコミ向け試写会で「遺族が経験したことを追体験していただけたら」と語った。

はたしてそのとおり、フロントラインプレスCDR取材班の筆者は、スクリーンを見ながら、遺族グループの内側にいて、一緒に答えを探し続けているような感覚にとらわれた。というのも、この映画には、遺族たちが撮った映像が多く含まれるからだ。

大川小学校の子どもたちの絵
大川小学校の野外ステージに描かれていた子どもたちの絵(©2022 PAO NETWORK INC.)
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